21-22 LaLiga 第31節 エルチェCF 対 レアル・ソシエダ(2022.4.10)

シーズンも佳境に入り、暫定6位。下も上も詰まっており、1試合1試合の成績で順位が入れ替わりうる状況。欧州のコンペティション出場を狙える位置につけている幸せを噛みしめつつ、終盤戦を見届けたい。

会場はElcheのホーム、Estadio Martínez Valero。選手入場を賛美歌のようなhimnoの大合唱(アカペラ)が迎える。歌詞を見てみるとこれが中々誇り高い。

エルチェの組織的な守備・攻撃に対してawayでどれだけ主体的に戦えるか。

主審:ギジェルモ・クアドラ・フェルナンデス

◇着眼点

得点力不足に耐えかねた(?)イマノルが急遽発進させた中盤ダイヤモンドの4-4-2、これが機能したのかどうか、Elcheのストロングポイントであるパス攻撃にモヒカを使ったサイド攻撃にどう対抗するか。
Elcheの攻撃を受けつつ、反撃でどのように好機を作ろうとしていたか見ていきたい。

◇先発紹介

f:id:wesleysni:20220417012912p:plain

La Realは驚きの4-4(◇)-2。何でアリツじゃないの?私の不満はそこです。Elcheは結構よく見る並び。シーズン序盤は3バックも多かった印象ですが。


◇交代、構築変更

*Elche*
’42
①G.カリージョOUT、E.ポンセIN
FW同士。

'HT明け
②グンバウOUT、R.グティIN
CH同士。
③D.ゴンサレスOUT、G.ベルドゥIN
左CB同士。D.ゴンサレスが良くなかったのも大きいと思う。

’68
④H.パラシオスOUT、ホサンIN
右SB同士。SHで出ることの多いホサンをSBに入れ、サイド攻撃を強化。
’81
⑤マスカレルOUT、K.ペレスIN
CH同士。前寄りの特性の選手に変え、同点逆転を目指す。

*La Real*
’68
ラフィーニャOUTポルトIN
②ソルロスOUTヤヌザイIN
4-3-3に戻してポルトゥが右WG、ヤヌザイが左WG。昨季はオヤルやバレネ、メルケランスがいたんでポルトゥとヤヌはほぼ右か最前線しかやってなかった。二人とも左でも悪くないので助かってます。

’78
③シルバOUT、アイエンIN
④リコOUT、アリツIN
アリツを3バックの中央に置く5-4-1に変更。残り10分受け切ろうってか。

’85

⑤サルドゥアOUT、ゴロサベルIN

右WB同士を交代。

◇La Real保持

<組立て>

La Realのビルドアップに対し、Elcheは4-4-2ブロック。前2枚は分業制、一人がアンカーをマークし、もう片方は相方のアンカーマーク後、じわじわボールホルダーのCBに寄せていく。SBは珍しく高い位置を取る。Elcheの中盤ラインはDFライン近くとあまり出てこないので、その4枚の前の広いスペースをLa Real2CB、シルバを含む中盤4枚が使って組み立てる。中盤4枚のロンボは誰かが相手を引きつけ、その隙に他の誰かがライン間を突く。
La RealはマークがきつくないCBの持ち上がりを起点にするパターンとElche中盤ライン手前に引いてきたIHを使うパターンが主。IHに入れるとその後落としでスビメンディを使えるし、SBが高い位置を取っているのでパスコースに困らない。

Elcheは4-4間を狭くし、La RealのFW2枚+中盤3枚の使いたいスペースを消す。同点に追いついた前半32分からいつもの4バック横並びに戻ってしまったが、この時は良かった。の図👇こんな~~時代もーあーったねと~~

f:id:wesleysni:20220417115417p:plain

4バック横並びの何が困るかって、後ろは4+3で作るので、Salida後前3枚で攻めることになってしまう事。相手としては守りやすいし、サイドのパスコースが無いのでIHが詰みやすい。しんどい

 

<Salida成功後>

・引いてきたIHに入れた後、パスワークで攻める。

IHは前述のように落としでスビメンディを使ったり、高い位置にいるSBと連携ー引いてきたFWとの3角形で回したりライン間に飛び出す中盤に差したり。受けた時点でボールより前に味方が多いので、攻めにVarietionを出せる

・早めにFWに入れる

2トップなだけあり、イサク、ソルロスは3トップの中央をやってる時より相手にするDFが少ない。前者は速さとドリブル、後者は速さと強さで仕掛けた。

(’32~)

SBの上りが無いため、FWがサイド大外まで流れることが増えた。前3枚による単調な攻撃に。ビルドアップに、後ろに人数を割いてしまういつもの重たいソシエダです。はい。IHが前を向いて受けられないのがつらい。

(’68~)

いつもの形に戻し、少しは単調さが解消された。Elcheが前がかりに来る分裏のスペースが空き、特にWGへのサイドチェンジが効いた。ポルトゥの突進や流れたイサクに入れてそこを起点にする。多少雑なパスでもうまさで収めてくれる。

◇Elche保持

<組立て>

ElcheはSBを少し高い位置でタッチラインまで開く。

また、2トップが常に最前線に張るのでなく、セカンドトップ役のペレミジャは張り出さない遊撃隊。La Real2ライン間辺りで隙を窺い、後ろの味方からボールを引き出す。

La Realは4-4-2ブロックだが、いわゆる攻守分業の4-4-0ではなく、FW2枚はしっかりプレスバックをしたり、サイド大外までプレッシャーを掛けていた。

(後半)

La Realが5-3-2ブロックに引いたので、組立ては簡単に。バイタル手前にDFラインを構えるLa Real相手に、SBをガンガン上げて分厚く攻めた。フィデル、ラウールグティ、モヒカのいる左サイドの連携はとりわけ良い。

<Salida成功後>

この試合Elche何度もサイド攻撃から何度もLa Real最終ラインの裏を取った。Elcheの攻め口は以下の通り。

CB又はGK等からSBに入れる

この段階でLa RealはFWのラインを突破されている。4-4-2のLa Realは、中盤はエルチェ中盤を見るので、SBをElcheのSBにぶつける。

→SBからSHへ渡す、2トップもSHのフォローに近寄る。

La RealはSBがElcheのSB対応で出てしまっているので、CB、アンカー、IHの3枚をElcheのSH、2トップにぶつける。

→ガタガタになったLa Real最終ラインの裏に、フリーランニングで走り込む選手へのスルーパス

La Realが楔を受ける選手のトラップ際を潰しに行くのを利用し、数人で繋ぐことでSB、CBと順に釣り出し、最後は手薄になった最終ラインを長い距離のランニングで陥れる。

 

奪った後ポジトラでSHが最前線に上がり、SBの裏を取りにいくアクションも。前3枚~4枚になるので怖さがある。スビメンディがDFラインを助けるので、この速攻はしっかり防いだ。

後半、La Realが5-3-2、5-4-1にして守備の重心を下げると、速攻だと5枚を相手にすることになるので遅攻に切り替える。SBの上がりに合わせてSHを中に入れ、中を使いながら最後はアイソレートしたSH又はSBの速いクロスで仕留めに行く。

特にタイミングよく浮いてリンクマンになるペレミジャから再度に展開してクロスの流れを何度も作られた。La RealとしてはElcheの間に差した後は速いので、ペレミジャ等間に入れられた際にパスが送られそうな選手を潰しに行くとか、積極的な守備対応が欲しかった。

しかし、後ろの選手がしっかり相手前線をラインを下げ過ぎずに跳ね返し続け、バックパスに出たところをFWのプレスバックで奪回するなど、重心を下げた中でもコンパクトに守れていたのが受け切れた要因か。


◇選手寸評&プチ総括

大活躍/そこそこ活躍/普通/あんま良くない/悪い

*Elche*

バディア

反応が速い。浮き球処理は難点。puncher

パラシオス

イサクのマークを担当、ドリブルと速さに苦しんだが粘り強く対応。もう少し上がりたかっただろうなあ。
とんでもないロングスローを持っている。ゴール前中央辺りまで速い球足で届く。

エンソロコ

あんま動かず待ち構えるタイプのCBに見えた。

D.ゴンサレス

同点弾は彼のロストから。トラップが大きくなったところをソルロスに刈られ、被ショートカウンター。最後もこの男が背中をとられ、フリー気味で叩き込まれる。

モヒカ(Assist : ⑤)

追い越し注意。球足の長いロングスルーパスを成立させる迫力抜群のロングスプリント。よーいドンで千切られるので、La RealはDFから人を出さなければならない。カバーに追われる、速さのないスベルディアを度々苦しめた。
細かく繋がなくても、この人の持ち上がり一つで局面を進められるのも大きい。

マスカレル

自分が観た試合ではそんなに攻撃で輝いている印象はない。守備の細かい動き直しや素早いスペース、人への寄せがナイスだなという印象。出足が速い。スタミナもかなり。

グンバウ

守備がややフィジカル頼り感。身体をぶつけられないと躱されてしまう場面がしばしば。あんまし上がってくる印象が無い。攻撃の部分でもう少し彼の持ち味を観たい。とはいえ前半は速攻が多かったからマスカレル同様CHは目立たなかった。

テテモレンテ

身体をぶつけ、右サイドを守った。攻めても当たりの強さとキレでぐいぐい行ける。攻守に単純に優秀だった。

フィデル

足元の技術ばかり印象にあったが、オフザボールも賢い動ける司令塔。相手守備に自ら空けた風穴に楔を打ち込む敏腕アタッカー。先制点のプレアシスト(→モヒカ)は見事の一言。サルドゥア、スベルディアを手玉に取った。

後半はややトーンダウンした感。狭い所より広大なスペースに必殺のスルーパスを出す方があっているのかも。よいしょっと一振りで出すというより、ボールを左脚で少し動かし体の向きをひねった後に蹴るのが特徴的。アウトに掛けたり、色んな軌道でパスを通す。

ペレミジャ

引いてきて繋ぎ役をしたり、サイドに流れてボールを引き出したりとスペースを見つけるのがうまい。左右のキックの精度があり、リンクマンとして有能。守備も走力あるし、プレッシャーのかけ方も巧い。
フィニッシュの部分ではあまり絡めなかった。ボックスストライカー感は無いしなあ。

ギドカリージョ( Goal : ②)

先制点(1タッチゴール)のニア寄りへの斜めの入り方とそこから右脚でファーに流し込むフィニッシュは技前。

(途中出場)

エキシエル ポンセ

人一倍走る守備と、体格こそ恵まれないが果敢に身体を張り、ポストワークをする姿が胸を打つ。ボールを呼び込むランニングも良い。

G.ベルドゥ

しっかり寄せる守備対応が好感。あのごつさで結構速い。

ラウール グティ

味方を助けるポジショニングが光る。La Realがブロックの重心を下げたため、この人のパスワークが生きた。パスを循環させる力は今日出たCHの誰よりもあると思う。レギュラーでいいじゃん。

ホサン

サイド突破の切り札。SBできるんか。まあWBやってるしできるか。彼の仕掛けは一人では止められずアシスト未遂有。
守備も悪目立ちとかはなかった。

キケ ペレス

彼も動きながら差しにくる中盤かと。ラウールグティのように相手守備を外せる選手。パスの球種もいくつかもってそう。

*La Real*

レミー

流石のキック。失点はあれは取れない。

サルドゥア

守備の人への強さ、流石です。サルドゥアじゃないとブロック、1対1危ないなという場面がちらほら。彼も無骨なタイプだが、左のリコよりは全然組立ていける。はっきり言うと二人ともうまくない。

22分にクリアボールを拾って右隅に強烈なミドル。

スベルディア

失点時の対応、バタバタ。アシストを決めたモヒカの方を見ていなかった事もあり、スルーパスを自分の内側に通されるという悲しい事態を招いた。密着マークができないならゴールへのカットインを断つしかないだろ!

一方良い縦パスを通したり、逆サイドが空いたタイミングでルノルマンに渡したりと、ここ最近攻撃が凄く良くなった。守備は及第点を越えない、動き過ぎ。

ルノルマン

トラップとキックは上手いんだけど、相手を外す持ち方ができず、相手守備を動かせないためギャップを生めない。そのため持ち上がっても相手をずらせず周りがマークびっしりなので怖さが無い。その他が良いのでぶっ叩く気にはなれない。
88分のPKまがい、手癖が悪い。後ろから掴み倒しているように見えた。いつか退場するぞ

ディエゴリコ

SBとしては破格ってぐらいの身体の強さが攻守に生きる。巧さはないが孤立してもキープ力あるし、守備対応も粘り強い。残念なのは持った時のアイデアが乏しく、殆ど突進するか最前線に放り込むしかない点。アイエンだったら中盤と連携している場面でそうなのでそこは落胆。
ただ、ドリブルで剥がすことができるので、そこはルノルマンより上。

スビメンディ

敢えて消されていた感はあるが、CB→CBに振った隙とかもっと受けられるかなという場面はあった。

すぐさま縦に入れるための前に止めるトラップが流石です。守備対応は今一つ。カバーリングはスペースを潰して欲しい。

ラフィーニャ

運びが流石。メリーノがいることで守備負担は軽減された分高い位置を取れ、シルバとともに攻撃を活性化。

メリーノ

ファイヤー気味のソシエダ守備を救う1対1の強さ。低い位置から正確なロングフィードを蹴れるのが良い。

シルバ(Assist : ③、④)

同点弾をアシスト。マーカー手前、ソルロス奥という状況でマーク(D.ゴンサレス)を超える素晴らしい軌道で上げ、ゴンサレスに競らせなかった。勝ち越し弾のアシストもこの人。CKも上手いんだね。もっと蹴ってくれ、正直オヤルより良いと思う。イサクが決めてればアシスト3つ。

縦パスを受ける巧さがずば抜けてるし、この試合はエリア内でも自ら仕掛ける怖さがあった。

イサク

2トップかつチーム全体が前がかりなため、相手にするDFがいつもより少なくドリブルが生きる。ドリブルと間受けは本当に優秀、でもフィニッシュのところ頑張ってくださいよ...

2段モーションという反則を繰り出し、イエローを貰う失態を犯すイサクさん↓

Embed from Getty Images

ソルロス( Goal : ②)

攻守に力強さを見せた。17分はメリーノの裏への一本のパスに抜け、PKを獲得。パラシオス並みに速くてタックルにも屈しない強さでエリア内深くまで運んだ。

この試合はポストプレー後のパスも丁度良く、いつものようにマイナス方向に出ずに、楔を受けては左右の足でイサクや上がってきたSBに丁度いいスルーパスを供給。アシストがついてもおかしくない場面が幾つもあった。

同点弾はこの人のカットから。勝ち越し弾もこの人がポケットのところでダブルダッチで突破し折り返し好機を作り勝ち得たCKから。

個人的MOM。

(途中出場)

ヤヌザイ

流石のキープ力。守備もかなりタイトにこなした。成長。

ポルト

綺麗なラインブレイクを数本見られた。押し込みたい相手に、彼のような守備で働け、攻めては推進力を見せるアタッカーは非常に有効。

アイエン

タイトなマークは復帰後も健在。

ゴロサベル

彼特有の軽い守備対応が。

アリツ

守備の出足の速さが最高。一気にボール、人に詰め、ボールを相手が手懐ける前に自分の間合いに持っていく。

 

組織的な守備、攻撃を見せるElche相手に戦いを支配したとはとても言えないが、前半SBを高い位置に上げて攻撃的に戦っていた内に勝ち越せたのは大きかった。2点取るまでのSBの攻撃参加によるIHやFWのサポートが多彩な攻撃を生んだ。外が生きれば中も空いてくる。そこをシルバやラフィーニャが彩る攻撃は面白い。4-3-3でも他の形でも、もっとSBに高い位置を取らせるということを普段からして欲しい。4バック横並びのビルドアップは後ろに重たくないですかね。

守備面では、La Realのブロックを引いて作るまでの人基準の守備は動かされると穴ができる。その弱みを連動で突いてきたのが流石。2-1にした後重心を下げ、裏を取られてひっくり返される回数は目に見えて減った。それでもサイドを度々食い破られたが、フィニッシャーのカリージョが下がったのが幸運だった。

勝利が何より大事だけど、引いてカウンターに走らず、ボールを握って攻めさせない、ぐらいの戦いが観たいですけどね。いつからかリードしたら引くのが当たり前になってしまった。決してマドリー戦、ELライプツィヒ戦だけじゃないですね。今年は守備の年って感じがする。チームの今の調子からしてこれがベターって判断なんだろうが、ボールポゼッションにも挑んで欲しいです。