22-23 LaLiga J9 セルタ対レアル・ソシエダ(2022.10.16)@Estadio de Balaídos

敵地バライードスに乗り込んでの一戦。昨季対戦時は、La Realは4-1-2-3で臨んでいたので◇4-4-2対面でCeltaと戦うのは私がLa Realを観始めてからは初だと思います。
試合前色々な人が触れてましたが、今夏CeltaからLa Realに移籍してきたブライス・メンデスは古巣戦ですね。移籍早々LaLiga8戦5Gと爆発中!今節も期待しています。

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昨季の対戦は2戦2勝ながら内容は対照的前半戦はCeltaの速いパス交換を捕まえられずシュートの雨を浴びながら、今夏出場機会を求めてコペンハーゲンFCに移籍してしまったGKマシュー・ライアンのビッグセーブ連発で辛くも勝利。攻撃面もCeltaの強度の高いハイプレスに苦しんだ。
後半戦は、攻撃面は連携でCeltaのプレッシングを往なして安定感のあるボールポゼッション、それによる主体的な攻撃を披露。守備面は、エース・オヤルサバルの得点で前半12分に先制したチームがある程度前プレスの圧を減らしても中盤以降の争いで強くいくため、1-5-4又は1-4-5でセットしてCeltaの中盤、アタッカーのオフザボールを消しに行く構え。これによりCeltaの攻撃に自由を与えなかったことが功を奏し、1-0のスコアとは裏腹に内容が充実した勝利を挙げることができた。

この試合はセルタ日本公式ペーニャ「Peña Celtista Afouteza Nipón」さんと「Reala Nippon」のオンライン観戦会で生観戦しました(私はReala Nipponの平会員です)。結果は1-0の勝利ながら、内容はCeltaに軍配。La Realは所謂「プロフェッショナルファウル」、傷口をこれ以上広げないためのファウルを何度も犯し、受けたイエローカードは7枚。守備面ではCeltaの目まぐるしいパス交換、Celtaアタッカー陣に苦しみ、今季これまで試合を彩ってきたシルバ、ブライスに中々ボールを良い形で預けられず俄然苦戦。結果はプロスポーツのため勿論のこと、より内容を重視するLa Realとしては勝利を手放しでは喜べない一戦となりました。

鬼のように長い前置き、失礼いたしました。この記事では、CeltaがLa Realをどのように苦しめたのか、微力ながら振り返っていきたいと思います✑

◇先発紹介

スターティングイレブン

*La Real*

ミッドウィークのELシェリフ戦からの入替えは、
DFがゴロサベル⇔アリツ、パチェコスベルディア、リコ⇔アイエン。
MFがスビ⇔ゲバラ、イジャラ⇔トゥリ
FWが久保⇔CFDEZ

そこそこローテーションしてますね。ブライスももっと休ませたいですが。
怪我人はスベルディアが実戦復帰してCBのスカッドは元通り。LDも10/3のジローナ戦で足首付近を負傷したゴロサベルが実戦復帰。FWはバレネが復帰してCFDEZの復帰と併せてこちらも一応4枚カードが揃いました。(ナバーロは2トップ位置で出てないと思いますので、FWとしては数えていません。)

*Celta*

オスカルやベルトランが入ることもあるトップ下、この日はG.ベイガが先発。オスカルはこの日はロンボの右、彼も中盤~FWにかけて幾つものポジションをこなせるユーティリティープレイヤーですね。バルサ戦でも前線の起点になっていたラーセンは要注意ですね。その他は昨季から御馴染みの面々。
4-4-2対面、とても楽しみです。

◇交代、構築変更

*La Real*

'27
①アイエンOUT⇔D.リコIN
負傷交代。KO間際にマジョとハイボールの競り合いで頭同士をぶつけて出血していたアイエンだが、今度は右足内転筋を痛めてしまい交代。大事がないと良いなぁ。

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’46
②イジャラメンディOUT⇔メリーノIN
久々先発のイジャラは90分走れるコンディションには無いのかもしれない。
イジャラは左脚大腿部に違和感があり、90分の器用を避けたらしい。また、イジャラの状態が良かったので彼を先発で起用したとのこと。

’67
③ゴロサベルOUT⇔アリツ・エルストンドIN
LD同士の交代。守備を固める狙いもあるかもしれないが、ゴロが故障離脱明けである点にも因るか。

’74
④シルバOUT⇔ロベルト・ナバーロIN
⑤久保OUT⇔バレネチェアIN
主力を休ませる交代か。ナバーロをEI、バレネをEDに入れて4-3-3にシフト。マンツーマンからブロック守備に。

*Celta*

’64
①H.マジョOUT⇔O.ミンゲサIN
②G.ベイガOUT⇔C.ペレスIN
Doble cambio. ミンゲサはそのままLDに。ペレスは左インテリオールの位置に入り、セルビがトップ下の位置に移った。

’79
③F.セルビOUTG.パシエンシアIN

Celtaはラーセン、アスパス、パシエンシアの前3枚、トップ下?にペレス、その背後にベルトラン、オスカルの4-2-1-3的フォーメーションに。両SBを高く張り出させ、3トップは中でのフィニッシュに専念。


◇攻撃

<組立て>

マンツーマン気味に守るCeltaに対し、CBから直接攻撃的中盤に入れられる場面は少ない。縦のパスコースを切りに来るCelta守備陣に対し、La RealはSBからの横パスで中盤を使う事ができた。しかし距離のある横パスは結構難易度が高い。
フリーマン的に動くシルバに預けることで何とか攻撃に繋げる。特に右に流れた時は連携の巧いゴロサベル、ブライスと絡んで有機的な攻撃に繋がった。

Celtaのマンマーク守備に遭い、直接CBからへその位置のスビに出すことは難しいが、一度シルバやダウンスリー時高い位置を取ったSBに入れたところからスビのダイレクトを使うルートがよく効いていた。ボールより後ろにいる選手への注意は薄くなるし、スビならインターセプトされなければダイレクトで縦パスを差せる。

[後半]
La RealはIHを大外に寄せてCeltaのSBを釣り出し、その裏にトップ下のシルバや久保、ソルロスが走ってそこに出すなど、よりダイレクトな攻撃を展開。
勿体なかったのが、D.リコのポジショニング。スビがDFライン近くまで下がって後ろ3枚で組み立てる時、開いたCBと高い位置を取らないSB(リコ)が近くてそこだけ何の意味もない配置になっていたこと。低い位置のライン際に近い距離感の2人がいて何ができるのか。CeltaはこのLa RealのSBにはマークを着けていなかったので、本当に意味がなかったと思う。

相手のSB裏を取るにしても、マークがつかない時は、もう少し高い位置まで出た方がインテリオールが中に入れ、相手を配置で押し込めると思う。


<その他>

SBを上げ、ボールに複数人が絡むパス攻撃が最もチャンスを生んだ。今のLa Realは、中央3レーン辺りで、MF4枚+久保がボールを受けられるかが生命線だと思っている。誰かが前を向いて受ければ、彼らは近い距離感でプレーする周りの選手に上手く繋げてくれる。其々相手の嫌がる位置や、ボールホルダーをサポートする動きがうまいのでパス交換からチャンスにつなげる。

[後半]
上述の2トップ+シルバがCeltaのSB裏を取りに行くダイレクトな攻撃やスビメンディの縦パスによるテンポアップを起点にする攻撃など、よりダイナミックな攻撃になった。一度深さを取ることで味方の上がりを待てるので、グラウンダーで丁寧にボールを出せずともいつもの中盤+久保を中心とするパス攻撃ができた。

1点を追うCeltaが前がかりになった試合終盤はオープンになり、スムーズに敵陣に侵入できたが、勝負所で攻めが強引になったり味方同士が被ったりして追加点を奪えなかった。だが、4-3-3に変えてから3トップがOHのスルーパスを待ち構える場面なんかは、良い時のLa Realを思い出して良かった。


◇守備

<組立て>

CeltaのCBには2トップ、アンカーのベルトランにはトップ下のシルバ、SBにはSBがプレスを掛けに行くハイプレス。
これに対してCeltaは速いパス回しやFWに当てるレイオフでLa Realのマンマークをずらしていく。
また、ラーセンに中長距離のパスを通してポストさせたり、上がる味方と入れ替わりで中盤に降りるアスパスを使うのはどちらも何度も成功し、高い再現性を誇った。ラーセンは長いリーチを活かして、味方に叩くだけに留まらず自分でキープできる。

CeltaはSBを巧みに使う。
・高い位置に張らせてそこを起点に周囲のFW、中盤との連携で崩しに掛かる
・マークに来るLa RealのSBを引きつけてその裏をベイガ等に取らせる
・低い位置から味方が中盤で回している間にフリーで内、外を上がる。

どんどんボールを動かすCeltaのビルド~攻撃は結構マッチョだと思っている。


<その他>

Celtaは複数人のイメージ共有、ランニングがハマれば動きながらの目線と身体の向きを変えるダイレクトのパス回しでマンマークを無効化しながらボールを運べる。
スペースでなく人を守るLa Realとしては、この目まぐるしいパス回しに分が悪く、DFラインのところでようやく潰せるような、後手に回る守備を強いられた。

La Realはボールへのプレッシャーが掛かる場面ではその後方でしっかりマークに着いてCeltaのオフザボールを消せていた。
Celtaの攻撃の持ち味は、アタッカーのアクション、スペースに対してどんどんボールを出していく積極性だと思う。多くの選手が絡む動的な攻めで、綺麗にパスが通らなくてもセカンドボールを拾ってチャンスを生む。
La Realは、以下の注意が必要。
◎スペースを与えない為になるべくコンパクトに守ること
◎ボールホルダーへのプレッシャーを掛け続けること→オフザボールの動きに対応すること
◎クリアの処理を誤らないこと
◎セカンドボールを拾わせないこと

これらが崩れるとピンチを迎える。

74分過ぎ
3ラインコンパクトの守備ブロックを固めてきたLa Realはブロックの外で持つCeltaの選手に寄せにいかない。これは裏目だったと思う。Celtaの積極的なアタッカーにカットインを許して劣勢に陥った。

79分過ぎ

まず同点にしたいCeltaがファイヤーに踏み切る。前3枚が中央最前線に立ち、外、中からここにボールを入れるというシンプルな攻撃。あまり放り込んでこなかったのが助かった。


◇選手寸評&プチ総括

大活躍/そこそこ活躍/普通/あんま良くない/悪い

*La Real*

ゴロサベル
人に厳しいCeltaのマークを掻い潜るには彼のトライアングルパスの巧さが光る。ガランにやらせない1対1の守備でも輝きを放った。

スベルディア(ゴール:’54①)
大抵のFWにはロングボールを入れさせないこの人もS.ラーセンには苦しんだ。スベルディアが悪いとは言えないが、度々ポストプレーを許した。

後半の決勝点はソルロス、メリーノと2タワーの後ろでフリーで合わせてのもの。よく決めた。

スビメンディ
前に出せない中盤、SBが斜めにスビに戻す→スビのダイレクトの縦パスが刺さり続けていた。ダイレクトであれだけ速くて正確なパスを出せるのは凄い。足元でなく、動いた先の未来の足元に出すのでカットされない。
セカンドボールの予測が良く、相手に流れを渡し切らなかった。オープンな展開では彼のスルーパスが尚冴える。

イジャラメンディ(ゴール:’30①)
今季初先発。いち早くマーク相手を見つけるプレッシングの動きは流石。ボールを持った時にCeltaの寄せに苦しむ場面があった。
零れ球をワントラップでニアにぶち込んだ先制点は値千金。

久保
激しいフォアチェックで貢献。過密日程でELも出ていたのに走力が落ちないのが凄い。攻撃面は、間受けや裏抜けで違いを生んだ。ハーフスペースや左の大外、時には右にまで流れて色々なところでボールを受けた。OHとしても振る舞える彼が受けると、シルバやブライス、メリーノらと絡んでチャンスを生めるし、サイドでは突破を仕掛けられる。一方、裏抜けは抜けた後アイドゥーの好守に遭った。後ろから身体をねじ込んだり横からぶつけたりしてくる。背中で彼の動きを感じるか、もっと言えば彼と正対しての1対1の方が可能性があるかも。

ソルロス
アイドゥーに負けない強さと速さを武器に抜け出し、Celtaの脅威となった。当たりの強さだけでなく繊細なタッチでボールをキープし、起点となった。時々バイタルに引いて受ける動きも。アイドゥーを寄せ付けないフィジカルの強さ、スピードは流石。

(途中出場)

ディエゴ・リコ
守備時の高さ、強さは非常にありがたいが、保持時の位置取りがアイエンに比べて劣る。相手を引きつけているわけでもなく、La Realのパス攻撃にとって良い位置を取っているわけでもなかった。

R.ナバーロ
細かいボールタッチ、緩急のついたフェイントで対面のDFを翻弄。スペース、裏へのランニング等精力的なオフザボールはこの日も健在。

バレネチェア
(恐らく監督からの指示で)低い位置まで下がって守備を頑張った。攻めてはキープ力を見せた他、面白いパスをCelta最終ライン裏に通すなど持ち味の意外性を発揮。
若干スピードやキレが落ちているように見えたのが気になったが、復帰間もないのでこれから。

*Celta*

A.マルチェシン
素晴らしいセーブを連発。ディトゥーロより安定感含め、相手にしたくなさは上かもしれない。

アイドゥー
コウデ監督がファイヤーに打って出た80分以降、自陣の広大なスペースをケアする事になったが、持ち前のコートカバーリングで試合を成立させた。競り合いではソルロス以外には負けなかった。

オスカル・ロドリゲス
1点を追いかける終盤はタスクがどしっと増えたが、見事に”水を運ぶ役”を遂行した。前寄りが本職だろうに良い選手。

ガブリ・ベイガ
身体の強さ、しなやかさと速さを武器に攻守に活躍。攻めてはアクションの多さでLa Realの脅威となった。プレーの幅が広く、ポストプレーにスペースを突くランニング、身体を巧く使い、かつ足元の技術でボールを守るキープ、ファイナルサードでの意外性のあるプレー...etc 彼
44分のソルロスとの1対1、彼の股を通して往なしたところ、大変痺れた。

スベルディアの決勝点、彼がマークに着いていたがボールの方を見て外してしまった。

イアゴ・アスパス(ゴール:’39⑥)
ライン間受けとそこからのアイデアで違いを生んだ。同点弾は完璧にレミーロの逆を突いた。もう6点、恐ろしい。

ストランド・ラーセン
スベルディアとル・ノルマンの2枚相手に余裕のあるポストワークを披露。ここで収まってしまう事とCeltaのどんどん前につけていくサッカーの掛け算の破壊力はバルサ戦でも証明済み。この試合でも良く出ていた。

(途中出場)
カルレス・ペレス
遠目からでも狙えるパンチ力や、身体を巧く使ったボールキープで違いを生んだ。
この日はとにかくキレがあり、少しでもスペースを与えると迷わず切り込み、素晴らしいジョーカーとして機能。

G.パシエンシア
守備にも走らず電柱感。試合終了後に主審のレフェリングに苦言を呈し退場。ホイッスル後に退場する選手を初めて観た。暴言というよりのっぺり「お前のレフェリング酷い」と苦言を呈した模様。退場は気の毒だが審判もヘイトを買いそう。

 

(感想)

観返したらそこまで悪い試合じゃなかった、というのが一番の感想。前半は攻めあぐねたが、後半は組立てのアプローチを変え、より相手が空けたスペースをダイレクトで使いにいくサッカーで前進し、それで得たCKから勝ち越せた。
リアタイ時はぼこすかやられていたように見えた守備も、Celtaの攻撃が面白いように繋がっていた時以外はボールへの寄せ&オフザボールの潰しで相手の攻撃をコントロールできていた。
◇4-4-2にしてから、皆スプリントの必要、頻度が増えたり、コートカバー範囲が増えたり緩めないマンマークを強いられる事で皆頼もしくなったと思う。コウデが鍛え上げたCeltaほどではないが、徐々にイレブンが逞しくなってきた。怪しい判定もあったが、スビのパスミスによる1失点のみに抑えたことは素直に評価したい。

ヘタフェ戦では実直にハマるだけだったボール出しも、シルバや2トップらのフリーマンとなる動きを使ったり、スペースを突きにいったりアプローチが複数あって良かった。Celtaラテラルの組立て、崩しへの関与のさせ方はCeltaを見習いたい。アイエンはその辺りの振る舞いが上手いが、D.リコは良い位置が取れない時がまだまだ多い。右のゴロサベルも、良いものを持っているのでもっと自分がボール出し~崩しの中心になるぐらいの気概を以てボールに絡んできて欲しい。

Celtaに走り負けなかったことは週中にSheriffと試合をしたことに鑑みても素晴らしいスタッツ。イエロー7枚は痛手だが、一点を争う展開でカバーリングが難しいケースも多いマンマーク守備なのである程度仕方ない。

これは昨季から続いていることだが、マージンを守りに行く展開でチームが選択するのは往なすポゼッションでなくリトリート守備による逃げ切り。カウンターを喰らわない利点があることも分かる。

終盤クラブのベースの4-3-3に変えた後、IHのブライス、メリーノの上がりが遅れて前線が孤立した場面なんかでは如実に疲労の蓄積を感じた。ここからも中2-4日の試合日程が続くが、選手の負荷を管理しながらどこまで内容と結果を求められるか。W杯中断を待たず、EL・GLの1位/2位突破を決める連戦、オモニア戦とユナイテッド戦が待っている。

(下:今季試合日程)

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