🚲Tour de France 2023 観戦初心者が書くプレビュー(1/3)🚲 

※なんでいきなり自転車ロードレース?!
→実は好きです。La Realとは異なり時間がある時にハイライトで追う程度ですが、皆が協力して一人を勝たせる、コースプロフィール(山岳/平坦/丘陵...)によって活躍する選手が変わる等、この競技特有の魅力に惹かれ、同じ思いを少しでも持って下さる誰かの目に届けばという思いでここに記事を残します。
競技最大のコンペティションTour de Franceは世界三大スポーツとも言われ、その観客動員数は約1,000万人と言われています。

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今年のツールはバスクスタート!!最初の3日間、バスクを舞台にレースが行われます。バスクは自転車熱が高い事で有名です。以下リンク先HPの動画でも、”(バスク人応援団は)山でのレース、街中でのレース、どこへでも旗(Ikurriña)を携えて現れる”と表現されています(笑)

www.letour.fr

↑物凄く凝ったPVです。M.インドゥライン、M.ニエベといったツールを沸かせた往年のバスク人ライダーの他、熱く声援を送る観客の姿が映されています。

それでは早速本題に入りまして、今大会の概要、それから自分なりに思う見どころを記していきます📝

自転車ロードレース / Tour de Franceについて

自転車ロードレース / 競技としての概要

競技概要

自転車ロードレースは個人タイムトライアル(:ITT)を除き、基本的に道(コース)の上で、チームメイト同士で協力して争う団体競技です。チームの中には必ず一人(+α)のエースがいて、他の選手はエースを支えるアシストとして、エースを最速でゴールに届けるために働く。
チーム戦且つ大人数が道の上を走り、仲間と協力してゴールを目指す。これら要素だけを抽出すると、我々日本人には駅伝が頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。実際、正月の箱根駅伝で選手達が向き合うバラエティ富んだコースと環境(上り坂、下り坂、向かい風、追い風...)について、此処に挙げたものは全てロードレースにも共通するものです。
勿論全く同じではなく、大きな違いがロードレースが、全員が一斉にスタートし、全員で道の上をゴールまで走っていく事。単発(一日)で決着がつくワンデーレースと、複数日の累計タイムで争うステージレースに分かれる。

ワンデーレース

前述通り一発勝負。その日の行程(スタート~ゴール)を駆け抜けるタイムで競う。伝統があり、且つ規模の大きい大会は「クラシック」レースと呼ばれる。その中でもグレードが高いとされる5つのレースが「モニュメント」と呼ばれている。五輪や世界選手権もこれに当たる。つまり1日限りの勝負。
◎各チームは当然最短でゴールまで駆け抜ける、優勝を目標とする。

モニュメント一覧:
ミラノ~サンレモ(開催国:イタリア)
ロンド・ファン・フラーンデレン(開催国:ベルギー)
パリ~ルーベ(開催国:フランス)
リェージュ~バストーニュ~リェージュ(開催国:ベルギー)
イル・ロンバルディア(開催国:イタリア)

ステージレース

グラン・ツールと言われる3大会(ジロ・デ・イタリアツール・ド・フランスブエルタ・ア・エスパーニャ)が有名。それぞれ国をぐるっと回る。但し、バスや飛行機による移動も含む上、毎年コースプロフィールが変わる。ルートは真円を描くわけではなく、
前述の通り複数日の累計タイムで争う。それが最速の者が”個人総合優勝”者に輝く。
一方、各日ごとのスタート~ゴールまでのタイムで競う”ステージ優勝”と言う。
この他、ポイント賞、山岳賞があり、個人総合と併せて三賞と呼ぶ。

ツール・ド・フランスでは大会期間中、個人総合最上位の者が黄色のジャージ(マイヨ・ジョーヌ)を、ポイント賞最上位者が緑のジャージ(マイヨ・ヴェール)、山岳賞最上位者が白地に赤の水玉ジャージ(マイヨ・ブラン・ア・ポア・ルージュ)、最優秀若手に該当する者が白色のジャージ(マイヨ・ブラン)を着用して走る。そのため、二日目以降は、観客からも他の選手からも、誰がその前日まで三賞に最も近いか分かる仕様になっている。
山岳賞、ポイント賞はそれぞれ以下の基準により定まる。

<ポイント賞>
スプリントが強い選手に与えられる賞。
各ステージ1箇所の中間スプリントポイント通過順位に応じて、その上位15人に配分されるポイント。

ゴール通過順位に応じて上位15人に配分されるポイント
(←この賞はスプリントを競うもの故、平坦ステージの方が山岳ステージより多くのポイントが配分される=差がつきやすい)
この合計を争う。尚、途中リタイアとなり、最終ステージのゴールまで辿り着けなかった者は受賞資格が次点のものに移る(山岳賞も同様)。

<山岳賞>
登坂力に優れた選手に与えられる賞。
各山岳の頂上に設定された山岳ポイント(通過順に配分)の合計で争う。コース中の各山岳は超級・1級…・4級・ノンカテゴリーとグレード分けされていて、超級~4級まで、順に配分点も異なれば、得点できる人数も何人までか異なる。超級が最も得点が動き、点を貰える人数も多い。

この他、1998.1.1以降に生まれた選手の中で最も累計タイムが短い選手が受賞できる新人賞がある。2日目以降、新人賞の最上位者はマイヨ・ブランという白いジャージを着用する。最終的な受賞資格は上2賞と同様完走が条件となる。

このように、総合優勝の他にもポイント賞、山岳賞、新人賞の他、ステージ優勝など様々なモチベーションがある。チームの目標も当初目標、レースの展開が進むにつれて、いずれにおいても様々に分かれる。例えば最も栄誉ある総合順位には届きそうにないが、チームにスプリントが強い選手、逃げ切りを得意とする選手がいる場合は、それらの選手をエースとしてポイント賞やステージ優勝を狙うチームがいる、など。
目標に応じてチーム編成も異なるのが面白い。

レース展開(スタート~ゴール)

スタート~パレード走行(数km)
レースによって人数は異なりますが、1チーム約8名、計150名が一斉にスタート。
この際、よーいドンで静止状態からいきなり争いが始まると衝突、集団落車が起こる危険性が高い。このため、スタート~数kmは全員がゆっくりとした一様のペースで走る。観客の声援に応える機会としているため、これをパレード走行と呼ぶ。

アクチュアルスタート
旗振り役の合図でパレード走行が終わり、競技上の争いが本開始。
これ以降、それまで一塊で走っていた150名超の選手達の中から、チームの作戦及び選手個人の判断により他の大多数から先行して前で走ろうとする者(通称:逃げ)が生まれる。逃げの人数が多過ぎたり、有力な選手が含まれていたりすると、それら選手の先行を許すまいと追い掛ける者が現れるなどの駆け引きが行われる。数十kmも逃げが決まらない日もある。こうした駆け引きを経て"逃げ"と呼ばれる小集団が生まれる。

(逃げと集団)
逃げが決まると、一斉にスタートした150名超の選手達は、逃げと集団に大別される。集団の内、最も人数が多い or 有力選手を中心に構成されるものをメイン集団と呼ぶ。
メイン集団は逃げとのタイム差をコントロールする。特に逃げから勝者を出したくないチームは集団のペースを上げ、ゴール前までに先行する逃げを追い越せるようペースを配分する。

逃げの形成~終盤
逃げが決まると、逃げ集団の中では勝利を諦めて後方の集団に戻る者や、ペースを上げられず、メイン集団に迫られる周囲を置き去りにし、独力又は他の着いてきた者と協力し、更に少人数でゴールを目指す者などが出て来る。
また、メイン集団の中でも、途中で抜け出して先行する者が出てくる場合がある。こうした動きにより一塊だった選手達は更に細かいグループに分かれていく
細分化したグループは、その時点で最も先を走っているグループを先頭集団、メイン集団と呼ぶが、その他のグループは中継においては色々な表記のされ方で示される。例えば有力選手の名前、ステージレースであればカラージャージを着ている者がいればそのジャージ名...といった具合。

終盤~ゴール前

集団は勝利に向け、先行する逃げがいれば捕まえ追い越すべくペースを上げる。その集団が先頭集団となった時、今度は集団内の争いが始まる。終盤に入るとゴール前の争いに向けて各チームの位置取りが活発になる。終盤のせめぎ合いは激しく、その中で起こりうる落車に巻き込まれたくないという目的でポジションを上げるチームもある。
ゴール前が平坦路の場合、ゴールに近づくにつれどんどん集団のペースは上がっていく。最終局面が近づくと、ゴールスプリントによる勝利を狙うチームはスプリントトレインと呼ばれる一直線の隊列を組む。ロケット打ち上げのブースター切り離しのようにゴールに向けてどんどんアシスト選手がペースUP→オールアウトで離れていき、最後は最終アシスト(最終発射台とも)の選手の背中からエースが飛び出してゴールを狙う
この時、状況によってはチームのアシストがそれまでに力を使い果たし、最終局面に誰も残っていないというチームも出て来る。そんなチームのエースは、アシストが居なくても自身の力を温存する為、ゴール前まで他チームの選手の背中に張り付いたりする光景が見られる。実際、そのようなハイエナのようなアクションを勝利に繋げるケースも少なくない。
これが山岳ステージでも基本的には変わらない。ただ、登り等が過酷なレースではアシストが終盤までエースの周りに残れず、各チームのエース同士がゴールまで数十kmもガチンコ勝負を繰り広げる、という光景もよく起こりうる。


アシストの選手の役割

エースがしない事全てをしている、というのが答えになるかと思います。具体的には、
・補給食、飲料を後ろを走るチームカーと集団を往復して調達し、仲間に届ける。
・逃げとのタイム差をコントロールする。
・他チームの選手がアタックした際、そこに反応し張り付く。張り付かれた選手は敵を前に引き連れる事を嫌い、アタックを躊躇する事が多い。つまりこの行為が抑止力になる。”アタックを潰す”という表現が一般的に用いられている。
・エースの自転車機材に故障(メカトラ)があり、尚且つスペアバイクやメカニックの到着が遅くなる場合、自車の一部、またはそれで解決しない場合は丸ごとエースに差し出す。
・エースの前を走って風除けになってエースが受ける空気抵抗を減らし、エネルギーを温存させる。
・集団のペースを上げる
→集団の選手達の余裕を奪い取り、自分達のエースを脅かす他有力ライバル及びそのアシストによるアタックの余地を削る。
→集団内の選手をふるいに掛け、人数を減らす。つまり自分達のエースが相対するライバルの人数を減らす。
・エースがライバルから遅れた場合、連れ戻す為に集団から下がり、復帰するまで前を引く。
・逃げに入る。
→ステージレースでは、
※+αとしたのは、チーム戦術として同等に力のある選手をWエース、Tエースという形で複数人用意し、展開や調子によってレースの中でエースを切り替える場合があるためです。過去大会では、2010年代のモビスターがA.バルベルデ、N.キンタナ、M.ランダらの中からWエース、Tエース体制を敷いたり、最近では昨年(2022年)大会でユンボ・ヴィスマが、単一エース体制の前大会覇者・T.ポガチャル擁するUAEエミレーツに対し、P.ログリッチJ.ヴィンゲゴーWエース体制で勝負を挑みました。
個人的には、シングルエース、複数エース体制いずれにも良さ、懸念点があると感じています。
⦿シングルエース体制
<良さ>
・アシストに徹する選手の人数が多い→チーム戦術としてエースのサポートをより手厚く行える。
・エース/アシストの役割の区別が明確。
<懸念点>
・エースにトラブル(体調不良、ハンガーノック、落車等アクシデント)による遅れ/リタイアがあった場合、代役を立てづらい。

⦿複数エース体制
<良さ>
・エースの内一人がトラブルに遭って遅れても、その者をアシストに回し、総合タイム等から最も好成績を期待できるライダーをエースとして確定させるなど柔軟に立ち回れる。
・昨年大会のように、Wエースが矢継ぎ早にアタックを仕掛ける事で、他チームに大きなプレッシャーを掛けられる。というのも、他チームからすれば総合順位で上位にいる有力なライダーがアタックを仕掛けてくれば、抜け出された時に決定的タイム差をつけられる恐れが有る為追わざるを得ない。この事を強力な連携攻撃に繋げたのが昨年大会第11ステージのユンボ・ヴィスマ。ログリッチとヴィンゲゴーのWエース2枚による連続攻撃でその時点の個人総合首位・ポガチャルを苦しめました。映像を観ていただいた方が理解が早いと思います。J SPORTSさんにより、丁寧かつ的確な解説を交えられており、大変面白い一本です。

www.youtube.com<懸念点>
・最優先で支えるべきエースが誰か曖昧。エースの内誰かが遅れた場合、その者を集団に引き上げる為に残るアシスト、前を走る他のエースを支えるアシスト...という様にチームが分裂する恐れがある。結果、サポートの集約という点が失われる。
・アシストに専念する選手の人数が、単一エース体制のチームと比較して少ない。

どちらにも利点があり、結局は展開次第という印象です。
この中で1日で勝敗が決まるワンデーレース、複数日の累積タイムで争うステージレースがあります。

まとめ

如何でしたでしょうか。本記事を通じて、自転車ロードレース、そしてツール・ド・フランスが大体どのようなものか、外観が少しでも伝われば、または観た事があるけどよく分からなかった、という方がそういう事か、と少しでも腑に落ちる部分があれば幸いです。
この後2partに分けて、今大会のコースプロフィールそれから出場選手について記していければと思っています。引き続きよろしくお願いします。