🚲Tour de France 2023 観戦初心者が書くプレビュー(1/3)🚲 

※なんでいきなり自転車ロードレース?!
→実は好きです。La Realとは異なり時間がある時にハイライトで追う程度ですが、皆が協力して一人を勝たせる、コースプロフィール(山岳/平坦/丘陵...)によって活躍する選手が変わる等、この競技特有の魅力に惹かれ、同じ思いを少しでも持って下さる誰かの目に届けばという思いでここに記事を残します。
競技最大のコンペティションTour de Franceは世界三大スポーツとも言われ、その観客動員数は約1,000万人と言われています。

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今年のツールはバスクスタート!!最初の3日間、バスクを舞台にレースが行われます。バスクは自転車熱が高い事で有名です。以下リンク先HPの動画でも、”(バスク人応援団は)山でのレース、街中でのレース、どこへでも旗(Ikurriña)を携えて現れる”と表現されています(笑)

www.letour.fr

↑物凄く凝ったPVです。M.インドゥライン、M.ニエベといったツールを沸かせた往年のバスク人ライダーの他、熱く声援を送る観客の姿が映されています。

それでは早速本題に入りまして、今大会の概要、それから自分なりに思う見どころを記していきます📝

自転車ロードレース / Tour de Franceについて

自転車ロードレース / 競技としての概要

競技概要

自転車ロードレースは個人タイムトライアル(:ITT)を除き、基本的に道(コース)の上で、チームメイト同士で協力して争う団体競技です。チームの中には必ず一人(+α)のエースがいて、他の選手はエースを支えるアシストとして、エースを最速でゴールに届けるために働く。
チーム戦且つ大人数が道の上を走り、仲間と協力してゴールを目指す。これら要素だけを抽出すると、我々日本人には駅伝が頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。実際、正月の箱根駅伝で選手達が向き合うバラエティ富んだコースと環境(上り坂、下り坂、向かい風、追い風...)について、此処に挙げたものは全てロードレースにも共通するものです。
勿論全く同じではなく、大きな違いがロードレースが、全員が一斉にスタートし、全員で道の上をゴールまで走っていく事。単発(一日)で決着がつくワンデーレースと、複数日の累計タイムで争うステージレースに分かれる。

ワンデーレース

前述通り一発勝負。その日の行程(スタート~ゴール)を駆け抜けるタイムで競う。伝統があり、且つ規模の大きい大会は「クラシック」レースと呼ばれる。その中でもグレードが高いとされる5つのレースが「モニュメント」と呼ばれている。五輪や世界選手権もこれに当たる。つまり1日限りの勝負。
◎各チームは当然最短でゴールまで駆け抜ける、優勝を目標とする。

モニュメント一覧:
ミラノ~サンレモ(開催国:イタリア)
ロンド・ファン・フラーンデレン(開催国:ベルギー)
パリ~ルーベ(開催国:フランス)
リェージュ~バストーニュ~リェージュ(開催国:ベルギー)
イル・ロンバルディア(開催国:イタリア)

ステージレース

グラン・ツールと言われる3大会(ジロ・デ・イタリアツール・ド・フランスブエルタ・ア・エスパーニャ)が有名。それぞれ国をぐるっと回る。但し、バスや飛行機による移動も含む上、毎年コースプロフィールが変わる。ルートは真円を描くわけではなく、
前述の通り複数日の累計タイムで争う。それが最速の者が”個人総合優勝”者に輝く。
一方、各日ごとのスタート~ゴールまでのタイムで競う”ステージ優勝”と言う。
この他、ポイント賞、山岳賞があり、個人総合と併せて三賞と呼ぶ。

ツール・ド・フランスでは大会期間中、個人総合最上位の者が黄色のジャージ(マイヨ・ジョーヌ)を、ポイント賞最上位者が緑のジャージ(マイヨ・ヴェール)、山岳賞最上位者が白地に赤の水玉ジャージ(マイヨ・ブラン・ア・ポア・ルージュ)、最優秀若手に該当する者が白色のジャージ(マイヨ・ブラン)を着用して走る。そのため、二日目以降は、観客からも他の選手からも、誰がその前日まで三賞に最も近いか分かる仕様になっている。
山岳賞、ポイント賞はそれぞれ以下の基準により定まる。

<ポイント賞>
スプリントが強い選手に与えられる賞。
各ステージ1箇所の中間スプリントポイント通過順位に応じて、その上位15人に配分されるポイント。

ゴール通過順位に応じて上位15人に配分されるポイント
(←この賞はスプリントを競うもの故、平坦ステージの方が山岳ステージより多くのポイントが配分される=差がつきやすい)
この合計を争う。尚、途中リタイアとなり、最終ステージのゴールまで辿り着けなかった者は受賞資格が次点のものに移る(山岳賞も同様)。

<山岳賞>
登坂力に優れた選手に与えられる賞。
各山岳の頂上に設定された山岳ポイント(通過順に配分)の合計で争う。コース中の各山岳は超級・1級…・4級・ノンカテゴリーとグレード分けされていて、超級~4級まで、順に配分点も異なれば、得点できる人数も何人までか異なる。超級が最も得点が動き、点を貰える人数も多い。

この他、1998.1.1以降に生まれた選手の中で最も累計タイムが短い選手が受賞できる新人賞がある。2日目以降、新人賞の最上位者はマイヨ・ブランという白いジャージを着用する。最終的な受賞資格は上2賞と同様完走が条件となる。

このように、総合優勝の他にもポイント賞、山岳賞、新人賞の他、ステージ優勝など様々なモチベーションがある。チームの目標も当初目標、レースの展開が進むにつれて、いずれにおいても様々に分かれる。例えば最も栄誉ある総合順位には届きそうにないが、チームにスプリントが強い選手、逃げ切りを得意とする選手がいる場合は、それらの選手をエースとしてポイント賞やステージ優勝を狙うチームがいる、など。
目標に応じてチーム編成も異なるのが面白い。

レース展開(スタート~ゴール)

スタート~パレード走行(数km)
レースによって人数は異なりますが、1チーム約8名、計150名が一斉にスタート。
この際、よーいドンで静止状態からいきなり争いが始まると衝突、集団落車が起こる危険性が高い。このため、スタート~数kmは全員がゆっくりとした一様のペースで走る。観客の声援に応える機会としているため、これをパレード走行と呼ぶ。

アクチュアルスタート
旗振り役の合図でパレード走行が終わり、競技上の争いが本開始。
これ以降、それまで一塊で走っていた150名超の選手達の中から、チームの作戦及び選手個人の判断により他の大多数から先行して前で走ろうとする者(通称:逃げ)が生まれる。逃げの人数が多過ぎたり、有力な選手が含まれていたりすると、それら選手の先行を許すまいと追い掛ける者が現れるなどの駆け引きが行われる。数十kmも逃げが決まらない日もある。こうした駆け引きを経て"逃げ"と呼ばれる小集団が生まれる。

(逃げと集団)
逃げが決まると、一斉にスタートした150名超の選手達は、逃げと集団に大別される。集団の内、最も人数が多い or 有力選手を中心に構成されるものをメイン集団と呼ぶ。
メイン集団は逃げとのタイム差をコントロールする。特に逃げから勝者を出したくないチームは集団のペースを上げ、ゴール前までに先行する逃げを追い越せるようペースを配分する。

逃げの形成~終盤
逃げが決まると、逃げ集団の中では勝利を諦めて後方の集団に戻る者や、ペースを上げられず、メイン集団に迫られる周囲を置き去りにし、独力又は他の着いてきた者と協力し、更に少人数でゴールを目指す者などが出て来る。
また、メイン集団の中でも、途中で抜け出して先行する者が出てくる場合がある。こうした動きにより一塊だった選手達は更に細かいグループに分かれていく
細分化したグループは、その時点で最も先を走っているグループを先頭集団、メイン集団と呼ぶが、その他のグループは中継においては色々な表記のされ方で示される。例えば有力選手の名前、ステージレースであればカラージャージを着ている者がいればそのジャージ名...といった具合。

終盤~ゴール前

集団は勝利に向け、先行する逃げがいれば捕まえ追い越すべくペースを上げる。その集団が先頭集団となった時、今度は集団内の争いが始まる。終盤に入るとゴール前の争いに向けて各チームの位置取りが活発になる。終盤のせめぎ合いは激しく、その中で起こりうる落車に巻き込まれたくないという目的でポジションを上げるチームもある。
ゴール前が平坦路の場合、ゴールに近づくにつれどんどん集団のペースは上がっていく。最終局面が近づくと、ゴールスプリントによる勝利を狙うチームはスプリントトレインと呼ばれる一直線の隊列を組む。ロケット打ち上げのブースター切り離しのようにゴールに向けてどんどんアシスト選手がペースUP→オールアウトで離れていき、最後は最終アシスト(最終発射台とも)の選手の背中からエースが飛び出してゴールを狙う
この時、状況によってはチームのアシストがそれまでに力を使い果たし、最終局面に誰も残っていないというチームも出て来る。そんなチームのエースは、アシストが居なくても自身の力を温存する為、ゴール前まで他チームの選手の背中に張り付いたりする光景が見られる。実際、そのようなハイエナのようなアクションを勝利に繋げるケースも少なくない。
これが山岳ステージでも基本的には変わらない。ただ、登り等が過酷なレースではアシストが終盤までエースの周りに残れず、各チームのエース同士がゴールまで数十kmもガチンコ勝負を繰り広げる、という光景もよく起こりうる。


アシストの選手の役割

エースがしない事全てをしている、というのが答えになるかと思います。具体的には、
・補給食、飲料を後ろを走るチームカーと集団を往復して調達し、仲間に届ける。
・逃げとのタイム差をコントロールする。
・他チームの選手がアタックした際、そこに反応し張り付く。張り付かれた選手は敵を前に引き連れる事を嫌い、アタックを躊躇する事が多い。つまりこの行為が抑止力になる。”アタックを潰す”という表現が一般的に用いられている。
・エースの自転車機材に故障(メカトラ)があり、尚且つスペアバイクやメカニックの到着が遅くなる場合、自車の一部、またはそれで解決しない場合は丸ごとエースに差し出す。
・エースの前を走って風除けになってエースが受ける空気抵抗を減らし、エネルギーを温存させる。
・集団のペースを上げる
→集団の選手達の余裕を奪い取り、自分達のエースを脅かす他有力ライバル及びそのアシストによるアタックの余地を削る。
→集団内の選手をふるいに掛け、人数を減らす。つまり自分達のエースが相対するライバルの人数を減らす。
・エースがライバルから遅れた場合、連れ戻す為に集団から下がり、復帰するまで前を引く。
・逃げに入る。
→ステージレースでは、
※+αとしたのは、チーム戦術として同等に力のある選手をWエース、Tエースという形で複数人用意し、展開や調子によってレースの中でエースを切り替える場合があるためです。過去大会では、2010年代のモビスターがA.バルベルデ、N.キンタナ、M.ランダらの中からWエース、Tエース体制を敷いたり、最近では昨年(2022年)大会でユンボ・ヴィスマが、単一エース体制の前大会覇者・T.ポガチャル擁するUAEエミレーツに対し、P.ログリッチJ.ヴィンゲゴーWエース体制で勝負を挑みました。
個人的には、シングルエース、複数エース体制いずれにも良さ、懸念点があると感じています。
⦿シングルエース体制
<良さ>
・アシストに徹する選手の人数が多い→チーム戦術としてエースのサポートをより手厚く行える。
・エース/アシストの役割の区別が明確。
<懸念点>
・エースにトラブル(体調不良、ハンガーノック、落車等アクシデント)による遅れ/リタイアがあった場合、代役を立てづらい。

⦿複数エース体制
<良さ>
・エースの内一人がトラブルに遭って遅れても、その者をアシストに回し、総合タイム等から最も好成績を期待できるライダーをエースとして確定させるなど柔軟に立ち回れる。
・昨年大会のように、Wエースが矢継ぎ早にアタックを仕掛ける事で、他チームに大きなプレッシャーを掛けられる。というのも、他チームからすれば総合順位で上位にいる有力なライダーがアタックを仕掛けてくれば、抜け出された時に決定的タイム差をつけられる恐れが有る為追わざるを得ない。この事を強力な連携攻撃に繋げたのが昨年大会第11ステージのユンボ・ヴィスマ。ログリッチとヴィンゲゴーのWエース2枚による連続攻撃でその時点の個人総合首位・ポガチャルを苦しめました。映像を観ていただいた方が理解が早いと思います。J SPORTSさんにより、丁寧かつ的確な解説を交えられており、大変面白い一本です。

www.youtube.com<懸念点>
・最優先で支えるべきエースが誰か曖昧。エースの内誰かが遅れた場合、その者を集団に引き上げる為に残るアシスト、前を走る他のエースを支えるアシスト...という様にチームが分裂する恐れがある。結果、サポートの集約という点が失われる。
・アシストに専念する選手の人数が、単一エース体制のチームと比較して少ない。

どちらにも利点があり、結局は展開次第という印象です。
この中で1日で勝敗が決まるワンデーレース、複数日の累積タイムで争うステージレースがあります。

まとめ

如何でしたでしょうか。本記事を通じて、自転車ロードレース、そしてツール・ド・フランスが大体どのようなものか、外観が少しでも伝われば、または観た事があるけどよく分からなかった、という方がそういう事か、と少しでも腑に落ちる部分があれば幸いです。
この後2partに分けて、今大会のコースプロフィールそれから出場選手について記していければと思っています。引き続きよろしくお願いします。

🚲Tour de France 2023 観戦初心者が書くプレビュー(2/3)~コースプロフィール編~🚲

前編ではロードレースという競技の概要を自分なりに記しました。あくまで今年のツール・ド・フランスに焦点を置いておりますので、ステージレースに偏ったものになっただろう事、ご容赦ください<(_ _)>

本編では、選手達がどんな道のりを舞台にレースを走るのか、という事を紹介したいと思います。色々詳細な情報がまとめて出ていますので、ここでは本当に軽く済ませます。
全体図、各ステージ(計21ステージ)のコースレイアウトについては、以下Tour de France公式アカウント(日本語版)のTweet添付画像及び以下J SPORTS社さんのWebサイトをご参照ください。

www.jsports.co.jp

 

見ていただくと分かるのですが、とんでもない山続きです…
この後今大会のコース雑感、出場選手から見る展望を書いていく前に、関連する基礎知識をざっくりと紹介しておきます。

ロードレース関連用語

ステージを表現する用語について

以下3種類に大別される。

平坦
いわゆるピュアスプリンターと言われる、平坦路のスプリントで最高速を出せるパワーが自慢の選手達の勝利が期待されるステージ。ゴール前でのスピードがものを言う。
山岳
きつい登り坂を含み、展開によっては総合順位が大きく動く。ただし、きつい登りがあってもその後下って平坦路を走ってゴールというレイアウトだと、登りで抜け出してもその後下った後、空気抵抗の影響を受けやすい平坦路で追いつかれ、タイム差をつけるに至らないというケースがよくある。ゴール前が登り基調の方が差がつきやすい。
クライマーとよばれる、登坂力自慢の者達が輝くステージ。登る力が勝負を分ける。
丘陵
比較的細かいアップダウンを含むステージ。いわば①と②の間とも言える。
クライマーが勝利を収めるほどのレイアウトでは無いが、登りに弱いスプリンターはゴール前に残れない場合がある。クライマーが差をつけるには至らず、ピュアスプリンターはゴール前の争いまでに遅れて絡めない→
登りもいけてスプリントも得意、という選手が勝利を収めやすい。

尚、平坦路はスピードが出るため、集団から抜け出して個人で走った時に空気抵抗を強く受ける→マークされた中では抜け出し、その後の独走が難しいためタイム差がつき辛い。タイム差がつき易いのはきつい登坂を含む山岳ステージ。斜度のきつい登り坂では、選手達自身の登坂力が登坂速度において支配的。空気抵抗もスピードが出る平坦路ほど影響を受けないので地力の違いによって差をつける事が可能。

また、山岳ステージと丘陵ステージは平坦路のように空気抵抗の影響をモロに受けないため、登り、下りの速さ/技術がタイムを分ける→場合によっては集団が逃げに対してタイムを詰め辛い→逃げ切り勝利が生まれる可能性が比較的高い

ツール・ド・フランスなどの大規模なステージレースでは、上3つのカテゴリー全てのコースを3週間にわたって選手達が駆け抜けていきます。
バラエティーに富んだコースに対応する為、総合優勝(累計タイム最短)者輩出を狙うチームは平坦路に強いアシスト、登坂に強いアシストと異なる脚質(:その選手の得意分野が何かを示すもの)の選手をスカッドに揃え、チーム全体でエースをサポートしていきます。

脚質に関する用語について

ざっくりですが、脚質の種類を以下見ていきます。
(ピュア)スプリンター
スプリンターとは、斜度がきつくない平坦路のゴール前で複数人によるスプリント合戦になった時、爆発的な加速力・最高速維持で勝利を狙える選手を指します。平坦ステージで勝負を狙う。
ピュアと括弧書きした理由は、登坂もある程度こなせて丘陵ステージでも登坂で遅れず、ゴール前のスプリント合戦で勝利を狙える選手を別の脚質で呼ぶからです。
これに対し、ピュアスプリンターとは登坂が苦手で、登りをある程度含むコースレイアウトだと終盤までに集団から遅れ、ゴールスプリントに絡めない恐れがある、平坦路スペシャリストを指します。ただ、その分平坦路におけるスプリント力に尖った性能を誇るので、強いピュアスプリンターと相対するチームは、登りでペースを上げてレース途中でふるい落とそうとする/足を消耗させる などの駆け引きを行います。

今大会の代表的選手:
M.カヴェンディッシュ(アスタナ)、J.フィリプセン(アルペシン)、D.フルーネヴェーヘン(ジェイコ)、F.ヤコブセンクイックステップ

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パンチャ―
前述していますが、ピュアスプリンターに対し、ある程度登りもこなせてゴールスプリントでも力を発揮する選手。丘陵ステージと非常に相性が良いです。勝ちパターンとしては集団の中で足を温存しても良いし、集団から抜け出しての逃げ切り勝利を狙う事も可能。スプリントが強い選手が狙えるものとして前編でポイント賞の存在を挙げましたが、近年の大会では、登り基調のステージでも中間スプリント、その後のゴールに絡みうるパンチャー系の選手が、ピュアスプリンターより全体で多くのポイントを稼ぎ出して賞獲得に至るケースが少なくないです。2010年代のP.サガン、近年のM.ピーダスンがその例たる選手達です。
また、逃げに乗れたり、平坦にも登りにも対応できるポリバレントな強みから、アシストとしてレース全般で活躍します。

今大会の代表的選手:
P.サガントタル)、M.ピーダスン(トレック)、M.トレンティン(UAE

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クライマー(総合系含む)
文字通り登りが強いステージ。総合優勝を争うには山での強さが必須条件。
括弧書きで総合系含む、としたのは、例えば一人で走るタイムトライアル(TT)の距離が長いステージレースでは、登りに特化して平坦路ではそこまで速くない”ピュアクライマー”が山岳ステージで稼いだタイム差をTTで失い、総合順位で後退する、というケースが見られますが、今大会のTTは1日だけで、それも登坂力が勝負を左右するコースレイアウト。従ってピュアクライマーと言える脚質の選手であっても総合順位を下げる要素が比較的少ないという点で総合系(:パンチャーでも厳しい登りに耐え、且つ平坦路も速く独走力も備えたオールラウンダー)をここに含めました。
山岳ステージで強力なクライマーが力を発揮すると、1日で数分以上の大差がつく事がざらに起こります。

今大会の代表的選手:
J.ヴィンゲゴー(ユンボ)、T.ポガチャル(UAE)、D.ゴデュ(グルパマ)、J.チッコーネ(トレック)...
※その他本当に多数。山岳偏重の今大会にあって、他の脚質に増して挙げ切れません。

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ルーラー
空気抵抗を受ける状況下でも一定のペースを刻み続けられるタフな選手。平坦ステージ(+丘陵ステージ)ではレース終盤まで、山岳ステージでは本格的な登りに入り、山岳アシストに仕事を引き継ぐまで黙々とチームを牽引します。中でもスピードに優れる選手は平坦基調のタイムトライアルでも活躍します。野球で例えると、試合を作る先発投手みたいなものと思っています。強い横風に晒される状況下では集団の隊列が斜めになり、分裂が起こりやすい。ルーラーのポジション確保、チームを引っ張り上げる力が鍵になる。また、スプリント合戦になるとパンチャー等に遅れを取りますが、独走力を活かして逃げに入り、勝利を狙う事もできます。

今大会の代表的な選手:
D.ファンバーレ(ユンボ)、J.カストロビエホ(イネオス)、I.ランパールト(クイックステップ

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今大会のコースについて

本題が遅くなりましたが、今大会のコースについて軽く触れていきたいと思います。
注目ステージ(抜粋計3)の特徴及びツール全体の概要が同一ページでチェックできる特集ページがありましたので、以下リンクを貼っておきます。本記事上方に張ったリンクの全ステージを網羅したステージ詳細ページ+下の見どころ解説ページの2つに基づいて言及する形で書いていきます。

www.jsports.co.jp

全体概要

見どころ解説にもあるように、例年にも増して登りが多いです。主要山岳エリアを全て通るという超山岳ボリューム大会に仕上がった結果、フランス一周というより、言わば”フランス山岳地帯横断レース”の様相を呈しています(笑)
総獲得標高56,200mを超える厳しい大会、当然総合優勝候補は山に強い選手達に絞られます。下の地図で示されるフランス本土の山岳地帯5つ全てを通過します。。

通過順に①ピレネー山脈(PYRÉNÉES), ②中央山塊(MASSIF CENTRAL), ③ジュラ山脈(JURA), ④アルプス山脈(ALPES), ⑤ヴォージュ山脈(VOSGES)。これを聞くだけでお腹いっぱいですねw

続いて、全21ステージの概観をざっと見ていきたいと思います。

◎第1週~休息日(1回目)
※便宜上、第〇ステージと書かず、〇日目と記します。この旨ご容赦ください。これは休息日を除いたレース(勝負を争う)何日目という意です。1~21日目までとなります。

1-3日目:バスク

ビルバオをスタートしてEuskadiを巡り、フランス側バスク(Iparralde)のバイヨンヌに至る道のり。初日、2日目は斜度がきつい登りを含み丘陵ステージにカテゴライズされています。ピュアスプリンターはゴール前まで粘れるか。特に初日は最大勾配15.6%という破壊的な登りを含み、パンチャー、クライマーによる争いが予想される。
3日目は多少のアップダウンを含むものの平坦路を走るステージ。スプリンターの熱いバトルが予想されます。

◎見どころ
初日にいきなり激坂クライムが待ち受けているという事で、初日から総合優勝を争う選手達の調子が問われるという勝負に特化したコース組み。
また、バスク地方の景観、チームプレゼンテーションでも大いに楽しんでいたバスク観客の熱は、冒頭から大会を盛り上げてくれること間違いなしです!!

4-6日目:ピレネー山脈

3日目に続き、4日目もスプリンターが輝く平坦ステージ。3日目よりもフラット、熾烈なスプリント合戦が見られそう。但し翌5日目にピレネー突入。早くも総合争いへ...5日目には超級山岳が登場し、6日目はタイム差が着きやすい山頂フィニッシュ(1/4)。1級コトレ・カンバスク(標高1,355m, 登坂距離16km,平均勾配5.4%)が勝負所。平均勾配的にはそこまでだが、この前にツールの名所・トゥルマレ峠を越えなければならない。えらいこっちゃ。

◎見どころ
個人的に5日目の各チームのレース運びが気になります。総合争いをするチームは山頂ゴールの翌日に向けて力を温存し、ペースを上げないか。そうなれば逃げグループにもチャンスが生まれて来る。個人的にはヴィンゲゴー、ポガチャルの力が抜けているので、総合を争えるオールラウンダーを複数抱えているバーレーン、イネオス辺りは誰かを逃げに乗せたり集団からアタックさせたりしても面白いのかなと思っています。そうでもマイヨ・ジョーヌを着れないぐらい、ユンボUAEは強い...。
とは言ってもまだまだ序盤なので、3週間競わなければいけない事で大きく動かないかもしれませんが。動いたら面白い。ポガチャル、ヴィンゲゴー以外の活躍も期待する外野だから言える事ですw

ピレネー山脈(PYRÉNÉES)

スペインとの国境沿い、イベリア半島の付け根を約430kmもの長さにわたって連なる雄大な山脈。サンティアゴ巡礼路も通るトレッキングの名所で、春夏には豊かな高山植物、秋には紅葉、冬にはスキー客をと四季を通じて多くの人を魅了する。

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7-9日目:南西部から中央山塊

7日目は平坦ステージだが、8日目は丘陵ステージ。細かいアップダウンが含まれ、ピュアスプリンターがゴール前に力を残すのは厳しいか。9日目は中央山塊へ突入し、ラストは超級ピュイ・ド・ドームを昇る山頂フィニッシュ(2/4)(標高1,415m, 登坂距離13.3km,平均勾配7.7%)。ここでの総合争いの結果、2週目にポジティブな気持ちで入れるチームはどこになるか。重要な一日になりそうです。

◎見どころ
この第1週、平坦ステージ、丘陵ステージをともに3日ずつ消化します。気になるのがポイント賞、マイヨ・ヴェール争い。ピュアスプリンター、パンチャーどちらが第2週に緑のジャージを引っ提げるのか。「登れるスプリンター」、ロット・ディスティニーのエースナンバーを背負うカレブ・ユワン辺りにも注目です。

中央山塊(MASSIF CENTRAL)

文字通りフランス国内中央部に位置する広大な山岳地帯。フランス語でMassif Central。ピュイ・ド・ドーム山を中心とする火山群。火山帯特有の赤茶けた火成岩と噴火活動が川をせき止めた事で生まれた散在する湖が織りなす風景は独特。

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(休息日1/2回目)

◎第2週~休息日(2回目)

10-12日目:中央山塊からジュラ山脈

10日目は休息日を挟んで、中央山塊を走る丘陵ステージ。2級山岳を含むなど獲得標高は高いが、ゴールに向けては下り→平坦というレイアウトの為総合は動かないかもしれない。逃げと集団の駆け引きも気になるところ。11日目はレース後半がほぼフラットの平坦ステージ、12日目はアップダウンが激しい、高低差図にするとギザギザな丘陵ステージ。逃げや再三のアタックなどを含むパンチャー達の目まぐるしい争いを期待。

◎見どころ
総合順位で大きく遅れてない選手の逃げ切りを許さなければ、総合順位は大きく動かないかもしれない。一方で特に10,12日目が逃げ切りが期待できるコースレイアウトという事で、マイヨ・ジョーヌを抱えるチームは集団コントロールアシストが大きく消耗する可能性もある。この辺り総合優勝を狙うチームがどう考えるかマイヨ・ジョーヌを手放す判断をする等)一つ注目。

ジュラ山脈(JURA)

ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏の西端、スイスとの国境沿いに南北に広がる山脈。「ジュラ」は森林を意味するラテン語に由来し、麓近辺は深い緑と水といった豊かな自然に恵まれている。

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13-15日目:ジュラ山脈からアルプス山脈(山岳ステージ3連戦)

13日目はジュラ山脈へ。再度やってきました超級山頂フィニッシュ(3/4)。当日の決戦の舞台、グラン・コロンビエ峠は標高1,501m, 登坂距離17.1km,平均勾配7.1%。あるあるですけど中間スプリントポイントが丘頂上手前という位置(標高800m弱)。スプリント(坂)とはこれ如何にw また、レース当日がフランス革命記念日という事で、フランス人クライマーの奮起に期待が寄せられます。
14日目、間髪入れず今度はアルプス(白目)。超級を下ってのゴールというのが山を得意としない選手達には唯一の救いか。しかしラストの超級の前に1級の峠を3回も越えなければならない...。そして中間スプリントポイントは何と山頂。悪趣味である。ステージ勝利にはダウンヒル能力が欠かせない。
15日目、ゴールは1級サン・ジェルヴェ・モン・ブラン(標高1,372m, 登坂距離7.7km,平均勾配7.7%)を登る山頂フィニッシュ。最後の1級だけを見れば他にもヤバい山は沢山あるが、この日の累積獲得標高はここまで最多の4,500m弱。休息日前とは言えこれは辛い。最後の1級の直前にある2級山岳アムラン、最大勾配17%ってなんすか?

◎見どころ
山山山。ここまで来ると、開幕当初はシャンゼリゼで総合表彰台に乗る事(最終総合順位が3位以内)を目標にしていた選手達の中で望み通りに試合が運ばず、ステージ勝利狙い or 山岳賞狙いに切り替える総合系ライダー達が出てきます。
前者のステージ争いであれば、集団内の総合順位争いで牽制が生まれた場合に逃げ切りやアタックが決まる可能性があり、山岳賞ならレース前半から積極的に逃げてピークハントに掛かる、というような積極果敢なアプローチに期待が掛かります。
是非とも、今年の総合決まっちゃったなー、という時にも、其々の目標に向けてひた走る選手達の戦いに注目してください!!

アルプス山脈(ALPES)

言わずと知れた中央ヨーロッパの大山脈。総延長は東西約1,200kmに及ぶ。ヨーロッパ各国に跨り、各地域をアルプスを水源とする天然水の河川で潤す。

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(休息日2/2回目)

◎第2週~休息日(2回目)

16日目:登りTT

山岳3連戦が終わっても総合勢が一息つけない個人タイムトライアル。レース後半が緩やかな登り基調になっていて、ゴールから2.5㎞ほど手前に位置する2級山岳・ドマンシーが最大の難所。登坂距離2.5㎞ながら平均勾配9.4%、最大勾配はなんと15%を超えるらしい。ここの攻略が秒差に表れそう。

17-20日目:アルプス山脈ヴォージュ山脈

17日目、ここに来てクイーンステージ。獲得標高は断トツの5,405m。。1級×2→2級と登り、最後は超級コル・ド・ロズ峠(標高2,300m, 登坂距離28.1km,平均勾配6%, 最大勾配24%)。30㎞弱も登らされるそうで...。さらにこの峠を超えた後下って、山岳飛行場へ登ってゴール(最大勾配18%)。実質5つ目の山頂フィニッシュと言えよう。言うまでもない鬼畜ステージ。歩くだけでもしんどそう。
18日目、カテゴライズは丘陵ステージだが、特に後半はほぼほぼフラット。山をもがき越えて来たスプリンターが栄誉を賭けて戦う舞台。登りが弱いスプリンターは最早足が残っていなさそうだし、登りに強いパンチャー達でもかなりの疲労がありそう。背景の濃いスプリント争い、感慨深ぇ...。
19日目:13日目に争ったジュラ山脈の麓付近、ジュラ県を舞台とする(カテゴライズ上は)平坦ステージ。ただコースレイアウトを見ると結構起伏に富む。18日目とカテゴライズが逆じゃないすか?と疑念を抱かせられる。アップダウンがスプリンターの足を削り、パンチャーによるゴール争いとなるか、スプリンターが意地を見せるか楽しみ。勿論翌日が最後の山岳ステージという事で、メイン集団が逃げを容認して逃げ切り勝利が生まれる可能性も多分にある。
20日目、ヴォージュ山脈を舞台とする正真正銘最後の山岳ステージ。133kmと短い距離に6つのカテゴリー設定山脈。ラストは1級プラツァーヴァーゼル(標高1.193m, 登坂距離7.1km、平均勾配8.4%)を通過後、フラットな道を8㎞ほど走り抜けてゴール。総合順位逆転を期す最後のチャンス、グランツール恒例だが、最終山岳ステージで逆転を目指して果敢にアタックを仕掛ける選手の姿が胸を打つ。

◎見どころ
例年以上に厳しいコースプロフィールの今大会、終盤には各チームのアシストの中にはリタイアする者、前日までの疲労で力を発揮できない選手が出てきます。そうした中では一層エースの実力が問われる。アシストの献身にリザルトという形で応えるエースの仕事、見どころでないわけが無いですね。

ヴォージュ山脈(VOSGES)

ジュラ山脈の北側に位置し、かつてのアルザス、ロレーヌ両地域を東西に分ける、南北に走る山脈。山麓の畑で育てられるリースリングなどから造られるアルザスワインは有名。ヴォージュ山脈が西からの湿った空気を遮り、アルザスワインのぶどう造りに一役買っているとの事。

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まとめ

しっかり目を通してみると、やっぱり今大会の過酷さはとんでもないです。通年の中でもビッグイベントのツール、皆今大会に向けて調整してきているとは言え、パフォーマンスを保ち続けるのは全く容易でないと思います。
また、各日の争いでは、前日までの疲労、翌日を見越した体力配分なんかもチーム戦術に大きく関わってきます。ロードレース中継の解説者の方はそうした細かい点にも言及してくれますので、是非色々な思いを巡らせながらツールという3週間の長い旅路を楽しんでください!

【22-23振り返り】◇4-4-2と4-3-3の2つの構築

La Realの22-23シーズンは久保やB.メンデス、U.サディクの獲得といったビッグディールが成された夏に始まり、勝ち点71を積み上げ、10年ぶりのUCL出場圏獲得するに至るというクラブ史に輝く1年になりました。
今回は、そんな今季を、2つのフォーメーション/構築で其々チームがどのような戦いを見せたかという観点から振り返って行こうと思います。

あくまで個人の所感ですので、何言ってんだこいつ。と気を害された方がいらっしゃいましたら、申し訳ございません。「そんな風に考える奴もいるんだ。」という様なスタンスで覗いて頂ければ幸いです<(_ _)>

 

◇4-4-2について

昨季元バルサラフィーニャ・アルカンタラが加入した後半戦から使用された中盤菱形のフォーメーション。今季は開幕戦(対カディスCF)から採用。日本及び現地にも衝撃を与えただろうポイントは、それまでWGもしくは2列目の各ポジションに入る事が多かった久保のトップ(2トップの左)起用。結果として彼のこの起用法が攻守両面でプラスに働き、チームの躍進を導いた。
昨季ラフィーニャが入っていた右のインテリオールは。同じレフティーのブライス・メンデス(同じくレフティー)が務める。
↓このシステムを構成した主なメンバーは以下の通り。

この◇4-4-2が昨季(21-22)限定のものでなく、今季も活用される事となった前触れの片鱗は、振り返れば、スカッド編成の段階にも見る事ができます。

スカッドとの兼ね合いについて

<中央、サイドどちらでも輝けるオフェンシブの多さ>
今季の戦いに向けてチームはB.メンデス、久保建英という2人の中盤~前線を務めるプレイヤーを獲得。更には獲得候補として、RBライプツィヒD.ソボスライの名前も挙がっていました。

この3名に共通するのが、中央でもサイドでも崩しに遜色なく貢献できるという性質。今季からトップ昇格を果たしたR.ナバーロも中外両方で貢献できるアタッカーです。〈長期離脱中のM.メルケランスも...( ノД`)シクシク…〉
開幕前には、4-3-3のフォーメーションで戦う場合、ブライスと久保はWG又は中盤オフェンシブ(シルバの位置)、どちらを務めるのか?WGという触れ込みだったモモ+他の既存選手との併用は?と様々な疑問が渦巻いてました。

また、9番(CFW)は昨季までのレギュラー、A.イサクを売却した上、U.サディク、A.ソルロスを獲得。更にはクラブの方針として期待の若手・J.カリカブルを1.5軍扱い(Bチーム登録ながらトップチームとの併用)する事が明言されており、「4-3-3なら一つのポジションを4人(サディク、ソルロス、CFDEZ、カリカ)で争う事に...?」と此方も小さくない懸念を抱かせられました。

◇4-4-2による戦い方

今季、イマノル監督は開幕戦(対カディスCF)からこの構築を採用。結果このフォーメーションでチームは大きく躍進していきました。
主要な出場選手は上図の通り。中盤~前線の役割としては、

(中盤)
・左IHのメリーノが4番(pivote〔PV〕)の組立て補佐も行いつつ攻撃参加するやや下がり目のようなタスク。
・右IHのブライスは左のメリーノよりやや攻撃的。トップ下のシルバらとともに崩しを担いつつ中盤のバランスも取る。
(FW)
・久保はややセカンドトップ的。裏抜けやフィニッシュなどFWとしての動きに加え、バイタルに引いて、シルバやブライスと共にボールの出口としての間受け+崩しも担う。
・ソルロスは9番寄り。久保のようにバイタルに引いてトップ下に振る舞う事はあまり無く、ポストプレー、DFラインとの駆け引き~フィニッシュなどストライカーとしての動きが主。

次にこのシステムにどのようなメリット、デメリットを感じたか書き留めておきます。

◇4-4-2の強みと弱み

(長所)
・中盤中央付近に選手が多く、PVより前の選手にボールが入った際、中盤ロンボ+ST役の久保の5人を主な演者として、複数人が有機的に絡んでバリエーションに富んだ攻撃が可能
・4-3-3よりトップ下が自由に振る舞える。→IH2枚が相手選手を引きつけた背後でパスを受ける/元々人のいないサイドに流れてパスを受ける...etc。
自由度を利用して相手守備にギャップを生む事に繋げられる。
・2トップ+トップ下で長短のカウンター攻撃に迫力を出せる
・主要なアタッカーの久保やブライスは中央でもサイドでも良さが出せる選手
→自軍、敵軍選手の位置を見ながら色々な攻撃の形を作れる
(久保、ブライスがトップ下/WG的に振る舞う...etc)
・ピッチ全体に満遍なく人が配された4-3-3より、中央に人が集まった形
→誰が大外を取るか等により、様々な形に可変できる。相手のサイドを守る選手にとっては、普段はそこにいない選手が中→外と入って来るわけで少し対応しづらい。
・最前線に2人いる事で、9番の選手が孤立しづらい。2トップの相方との関係性で自分へのマークを緩和したり、どちらかがピン止め役も兼ねて最前線中央に残る事でもう片方が他の動きができる(サイドに流れる、バイタルに引く、チャンネル間からラインブレイクを狙う...etc)。

(短所)
・相手SBの選手に人を当てづらい。
・ブロック守備ではトップ下を中盤ラインに組み込まなければならず、やや中盤ブロックの守備強度が下がる(4-3-3では、トップ下は守備時9番に並んで前2枚を形成する。)。
・後述の◇3-4-3に可変しない場合、中盤以前にボールが収まらない時に大外高めに選手を配せず、横幅広く攻められない時がある
・押し込んで攻撃を行い、SB+両IHまでが攻撃に意識が偏った時、即時奪回が決まらなかった場合のネガトラの対応で少ない人数で広大なスペースを守らなければならず、大変になる。
・4-3-3と比べ、前に人が多い+初期配置では人が中央寄り
各選手に常々ポジショニングのバランス感覚が求められる特に攻守で前と後ろを繋ぐ存在であるロンボの両脇(IH)の選手。+大外、バイタル、FW、中盤オフェンシブいずれの役割でも攻撃で遜色なく輝き、且つ守備でかなりの強度を出せる久保もこの形の鍵。攻守両面で彼の不在は大きく響く
全体のバランスが整わない場合、相手に広大なスペースを晒す事がある
・鋭敏なバランス感覚が求められる故、適応が容易ではない。特に上述のロンボの両脇、レギュラーのメリーノとブライスは、構成力担保の為に酷使を強いられた。
・ハイプレス時に相手SBにチェックに行ったり、攻撃で大外敵陣深くまで上がったりと初期配置では唯一の大外レーンの選手となるSBに膨大な運動量が課される可能性がある。
・押し込んだ状態からのネガトラ等で、即時奪回を抜けられると、前線の選手は長距離の戻りが求められる。これが間に合わず大ピンチを招く事がある。
4-3-3に比べ、押し込んだ際に前に人数が多くなる事が多いので、より上の傾向が顕著。

続いて、この形では各局面でどんな戦いを見せたか振り返って行きましょう。

基本構築

※各ポジション、一番上の選手の名前を借りて書いています。他の選手が出場する際は、読み替えてください。

組立て:
・4バック+PVの5人が中心。
・SBはボール出しが完了するまであまり上がらない。PVがCB間に落ちる事なく、あくまでDF4枚より前で関わる。
・ショートパスでの前進が難しければ、サイドに流れたFWにロングボールを蹴る。この時、可能な時にはロングパスの成功率を高める為IHがサイドに開く事で相手のサイドを守る選手リソースを削り1対1を作りに行く。
ボール出し:
・ボールの出口として、両IHの奥にいるシルバ又は中盤に引いてきた久保にパスを当て、その背後からメリーノ、ブライスらがサポートに入って受けて前を向く。
・IH、SBで相手のサイドの選手を2枚引きつけ、その奥に久保 or ソルロス対相手DFという1対1の状況を作る→そこに長いボールを蹴って、1対1の競り合いで収めて貰う。

崩し(中盤~前線がボールを受け、前を向けた所を始点と定義、以下同。)
・中盤4枚+久保がポジションを入れ替えながらバイタル攻略~エリア侵入に掛かる。
・上がって来たSBや2トップの一角らがサイド奥深くを抉りに行く。
・2トップ等前の選手が周りの相手選手と駆け引きし、生まれたスペースを突く。スペースを作る/突くのに長けたCFDEZが得意な形。

前からの守備:
2トップ(+シルバ)で相手ビルド隊にプレッシング。
相手SBには人を着け辛い。

・SBを大きくJumpさせてSBにSBをぶつける
→DFラインを大きくスライドさせる。

・中盤インテリオールが相手SBに出て行く
→3枚でのスライドはキツい。数を減らした中盤ラインには2トップの一角が落ちる等して対応。
ブロック守備:
時には逆サイドのSBがセンターサークル付近まで絞るぐらい、同サイド圧縮して狭く守る。
4-3-3採用の際に比べ、シルバを中盤ラインに組み込まなければいけない分そこの強度はやや低くなる。が、久保やブライスといった周りの守備で出力を出せる選手がカバー。また、陣形をコンパクトにして各々がカバーしなければいけない広さを限定していたのも大きかった。
また、そもそもこの◇4-4-2はボール出しが上手くいけば相手を押し込める
→相手を押し込んだ所からの即時奪回でブロック守備に移行せずに奪い切る事を目指し、ネガトラ職人のブライスを中心にタイトに奪回を試みていた。

保持時の可変の形(◇3-4-3)

◇3-4-3への可変①

◇3-4-3への可変②

◇4-4-2では2トップの位置に入る久保やモモがWGとしてもプレーできるという強みを活かし、特に前半戦に上のように、◇3-4-3の形に変わる時がありました。
①:
DFラインはソラ(LtD)が右WGの位置まで上がり、残りの3枚が中央寄りにスライド。久保が左WGの位置に流れて3-4-3のような配置を作ります。
ブライスはWGとしてもプレーでき、ゴロサベルはハーフレーンでの絡みも得意。ゴロサベルがLtDに入る際は、ブライスとゴロサベルが右WGと右IHの位置を入れ替える時もありました。
②:
DFラインはリコ(LtI)が左WGの位置まで上がり、残りの3枚が中央寄りにスライド。久保が右WGの位置に流れて3-4-3のような配置を作ります。

この形の特徴を以下挙げていきます。
・後ろの人数が1人少なくなるので、より多くの人数を中盤以前に割くことができる。
・WG位置に張り出す選手がいるので、ピッチを横に広く使った攻撃ができる。
・久保やソラ、リコらの、サイドでの推進力を活かせる。
・アイエン、エルストンドのビルドアップ能力を中寄りの位置で活かせる。
・後ろの人数が3枚なので、自陣など低い位置で相手に奪われるとピンチに陥る

最後に挙げたリスクはありますが、ピッチを大きく使った組立てが可能になるので、個人的には好きな変形でした。シーズン前半にはよく見られましたが、後半になるにつれて使用(変形)の頻度が減りました。
個人的にはタイトな守備に苦しめられたローマ戦で、相手ブロックに隙を生むためにこの形を使って欲しかったです。

これに対して、La Realのベーシックな形とも言える4-3-3(中盤▽)を用いた戦いを振り返って行きます。例年使っている形ですし、そのものへの言及は控えめにいこうと思います。

4-3-3による戦い

長年ユースカテゴリから基本形としている4-3-3。ピッチに縦横バランスよく選手が配され、攻守両面で選手間の関係性が生まれやすい。斜めのサポートが自然と生まれる形でもある。
↓主要な構成メンバーは以下の通り。
(来季はメリーノの下にトゥリエンテスの名前を記したいです。頑張れTurri!!)

スカッドとの兼ね合い

先にも触れているが、CFWが一人なので、ここがダボつく。開幕時にはサディク、ソルロス、CFDEZ、カリカブルの4名がいた(内サディクは前半戦の負傷で長期離脱、カリカブルは冬市場でレガネスにLoan移籍)。
一方、◇4-4-2と較べて両WGを配する形なので、そこはWGタイプの選手が多いスカッドを有効に使えていた(バレネチェア、オヤルサバル、モモ、久保、R.ナバーロら)。

4-3-3による戦い方

中盤は逆三角形のPV1枚、IH2枚という構成だが、メリーノがビルドアップ補助+攻撃参加の8番役、シルバがライン間で受けて前線と協力して崩しに関わるのが主の10番役
わかりやすく言えば、4-2-3-1然としていてメリーノはCH的だがシルバはトップ下的。

また、守備時はシルバ(10番役)が9番に並んで最前線のプレス隊となり、WGが中盤サイドを守る4-4-2ブロックの形が基本。勿論WGが最前線のプレッシングに出たり、PVが最終ラインに入ったりと状況によって形を変えるが、4-4-2の形が基本。

4-3-3の強みと弱み

※◇4-4-2と比較してどう、という観点から記します。
(長所)
・ユースカテゴリも含め、長年採用している形だけあり、在籍年数が長い選手ほど選手達に動き方、相手との兼ね合いが相当深く浸透している
・WGを採用する形で、ピッチを広くつかった攻撃が展開できる。また、守っては、状況に応じてSBが大外でWGの助けを得つつ守れる。
・基本形では中央に人が寄る◇4-4-2よりバランスが良い。
・トップ下を前に押し出して守備をする事が多い⇒守備の中盤ラインは4番、8番+両WGで構成する事になり、4番、8番が守る中盤中央は比較的強固になる。
・◇4-4-2と比べ、相手SBにマークをつけやすい(近い位置にいるWGが対応すればOK)。
(短所)
・2トップ採用時に比べ、9番が孤立しやすい。押し込んでシルバやWGらが絡んでいける時は良いが、自軍が押し込まれ、前1枚残りになっていた所からのポジトラ等では特に孤立が顕著になる。
・上とほぼ同じだが、WGも相手守備がハマっていて自軍全体の押し上げが十分でないと、タッチライン際の高い位置に張った場合に孤立しやすい。(低い位置にマークを連れながら降りたり中に入った場合、代わりに大外高くに張り出す味方選手がいなければ相手守備をコンパクトにする事になるので、それはそれで不利益がある。)
・初期配置でサイド奥深くに人がいない◇4-4-2に比べると、やや攻撃の形は相手にとって読まれやすい。
・トップ下役は中盤3枚の一角。◇4-4-2のように別に両IHがいるわけではないので、比較的自由を得難い。

基本構築

組立て:
・基本的に◇4-4-2の時と変わらない。
・ロングボールを蹴る時のターゲットは9番やWGとなる。
ボール出し:
・SB、IH、WGの三角形+PVの連携を使う。
・バイタルに引いてきた9番に当て、落としをIHらが受ける。
・8番役のメリーノより高い位置を取ったシルバが、相手中盤ラインの背後で受ける。ここにSBやWGが関わり、サポートの受け手になりつつ中→外の展開を作ってスピードアップを図る。

崩し(中盤~前線がボールを受け、前を向けた所を始点と定義、以下同。)
・3トップのラインブレイク。特にオヤルサバルは少しの隙を突いて抜け出すのが上手いWG。
アイソレーション(気味)で浮かせたWGの打開を起点にする。
・WG、IH、SBがレーンを入れ替えながら誰かが大外の深みを取る。
・◇4-4-2より、初期配置ではトップ下の前に1枚多い。押し込まずとも、前を向ければ10番の創造性を活かしやすい。

前からの守備:
・最前線のプレス隊は9番+10番の2枚が基本。マンツーマンで相手PVを見るのは、PVがjumpする事が多い。
・相手SBにWGを当てられるので、◇4-4-2で求められるそこの苦労は不要。
ブロック守備:
・10番を前に出してWGが4番、8番の外に構える4-4-2形が基本。
・同サイド圧縮するのは◇4-4-2と同じ。但し、シルバが他の中盤より前で守っている事もある◇4-4-2の時と異なり基本中盤フラットの4-4-2ブロックを敷くので、絞り具合の極端さはやや小さいかも。
PVがDFラインに加わる事があるのも◇4-4-2と同じ。後ろの人数が増える事で、両CBが引いて受ける相手前線をそのまま掴まえに前に出て行きやすいという利点がある。中盤がマークを受け渡されるよりも着きやすいし、前を向かせないアプローチを行いやすい。

可変の形の有無について

◇4-4-2→◇3-4-3のような、これと言えるドラスティックな可変の形は無いように思う。
ポジションチェンジや、細かいポジションの修正がメイン。

・IHがWGの外を回って追い越す。
・IHが低い位置を取るのに応じて4番が高い位置に少しポジションを上げ、相手守備の形を変えつつ自軍配置のバランスを保つ。
・片側サイドのPV、IH、SHらが寄って密集を作る→相手を寄せておいてサイドチェンジからスピードアップする。
・WGが中に入ってSBが大外に上がる⇔WGが開いておいてSBが内に入る。
・9番が引いた(流れた)ところ、WGや中盤が逆ベクトルで裏に抜け出す。

などなど、静的な状態で相手にどんと構えられた状態での崩しは難しいので、誰かが動いて空けたスペースを他の選手が違う動きをして使う、というアプローチの繰り返しで前進をはかる。

総括

近年、3バックの形や中盤フラットの4-4-2は見られましたが、今季の躍進を導いた◇4-4-2はそれらよりも攻撃的という意味で思い切った印象を受け、また時にはスリリングなものでもありました。

特に序盤は即時奪回が決まって攻撃を続行できるか、そこを抜けられてスビメンディやCBが凄く困る、といった天国か地獄かみたいな極端さもありました。
空いているスペースでボールを引き出す感覚に長けたR.リケルメ、ポジトラで前に出す意識の強かったO.ロメウに苦しめられて3点を叩きこまれたジローナ戦(前半戦)に限らず、大ピンチ!と言える場面がいくつもありましたw
また、短所として挙げたバランス感覚を要求される事から、適応の難しさからメンバーを固定して戦う事が多く、レギュラーメンバー疲労を蓄積することとなり、W杯前の苦戦の大きな一因になった。

マイナスな点を多く挙げてしまいましたが、前半戦を3位で折り返せたのは間違いなく◇4-4-2による躍進のおかげ。特に中盤4枚+久保が絡む中央からの崩しは上手く回れば相手の対応が後手後手になり、またブライス、久保、シルバといったタレント溢れるアタッカーの創造性が遺憾なく発揮され、相手を脅かしました。

個人的にはオヤルサバル、バレネチェア、トゥリエンテスといった、故障もあって上の画像の各ポジション筆頭メンバー以外の選手達の適応具合によっては、持続可能性という面でも好成績が見込めるフォーメーションだと思っています。
従って、もう◇4-4-2は使わず4-3-3だけでいけば良いとは到底思っていません。一つの形のみで長いシーズンを乗り切れると思えないという理由もあります。

来季も今から楽しみですね!!CLを戦える激熱なシーズンでもあります🔥

来季以降構築がどうなるんだろう、◇4-4-2に戻すとどう、といった事を思案されている方にとって、少しでもプラスになるものになっていれば幸いです。
お読みいただけた方、誠にありがとうございました<(_ _)>

ロベルト・オラベ(SD/La Real) インタビュー by La Voz de Galicia

La Realの3本柱(会長/SD/監督)の一角、ロベルト・オラベSDをLa Voz de GaliciaのXurxo Fernández氏が直撃取材⚡
チームの補強や目標について語った内容は時々目にしてきましたが、自身の経歴、考えについてじっくり語るものは私はあまり見てこなかったので、記事を通じて知った事をブログに残して自分の覚書とすると共に皆さんにも共有しようと思った次第です。

↷La Voz de Galicia社インタビュー記事はこちら

www.lavozdegalicia.es

 

取材担当記者:Xurxo Fernández Fernández氏

◎自身(R.オラベ)の経歴について
1967年バスク州都・Vitoria-Gasteiz生まれ。
※以下、オラベさんが語った内容ですので、基本主語は彼と考えてください。

 

◎インタビュー回答

・選手時代について

ユース選手時代にプロクラブの育成指導を受ける事はできなかった。
(現役最後のクラブとなった)La Realに入団した時、クラブとの唯一の繋がり:
自分のアイドルが同ポジション(GK)の L. アルコナーダ[La Realで2度のリーグ優勝、国王杯を1度優勝したレジェンド〕だった事ぐらい。

 

・指導者への転身

(現役時代)La Realの練習でチームメイトの動きを観察していると、特段優れた選手達には見えないが、試合になると並外れた競争力を発揮する事などが関心を惹いた。
現役を退いた時、直ぐにLa Realのjuvenil de División de Honor(Juve A)の監督に就任する事ができたので、現役引退と同時にサッカー界から去らずに済んだ。
Juve Aを指揮し始めた(指導者キャリアが始まった)頃から、自分なりの「取り組み方、視点」を築き、磨き上げ始めた。

 

・指導者/SD時代

毎年、選手を17人も新たに契約し、チームの目標についても多くの変化を強いられるチームにも在籍してきた。
→その事をあまり「快適」とは感じられなかった。
「タレントの育成」を目標に掲げるチームでは、最もチームと一体感を持つ事ができた。

中東、南米でも働く機会を得て、異なる社会を見てきた。
→このことから自身にそれまでに無かった知見(*)を得た。
*La Realに戻った時、既存のモデルを筋道立てて理解し直し、エリートレベルに求められる次元へ昇華させるのに役立った。

 

・La Real SD時代 (第Ⅱ期)

当時J.アペリバイ会長が、アギレチェ, ベルガラ, アンソテギ, X.プリエトといった、セグンダ降格からEL/CLまで経験してきた歴戦のベテラン達からの世代交代と路線変更を同時進行させていく事を検討していたことが、自分の最初のチャンスだった。

(4つの軸:サイクル変遷)

チームのサイクルが移り変わる際、以下の4つの軸に留意する事が大切と考えている。
①"アイデンティティー"モデルを有効活用する。
②モデルのマネージメントがもたらす好機を理解する。
③育成モデルに手を加え、現代化させる。
④プレーモデルをより深く掘り下げる。

エゴという部分をマネージメントする事が大きな挑戦。
ファン、提携クラブに関する理解、誰も2%以上の保有分を持っていない株式会社の特異性に関する理解...etc が必要。

また、着任当初、採用(リクルート)ユニットの改編に着手が必要だった。トップダウン方式→常に皆で話し合いうように方針を変えた。
+外部から見て貰う事が、我々のアイデンティティーをより信用できるよう促し、また我々のモデルの不完全な点を是正できると理解している。

 

・La Realのチームコンセプト

Zubietaでは地域(Gipuzkoa?)出身者:県外出身者の比率を80%:20%にするというコンセプトがある。
→「排外的なクラブ」ではなく、「包括的クラブ」という方針を掲げている。
Gipuzkoa
協同組合員的性格が目立つ社会/政治環境に覆われた地域。
また、la cuadrilla(友人グループ)、la sociedad gastronómica(美食俱楽部)といった社会的集まりがある。責任感が強く、約束を守り、努力する人達がいる地域。

(Gipuzkoaという特有の地域に根ざしたモデルによりチーム作りを行っているので、)我々のプロジェクトをコピー&ペーストして外部の組織に適用する事は不可能。

 

・育成環境について

UDアルメリアに在籍していた時、Juvenilチームの選手達に、夜10:45に練習するのは良くないと理解してもらう事が難しかった。
←彼らは学校に行っていたのではなく、海や農園で働き、結構な金額を稼いでいた。
→彼らに午後7時に練習してもらうのは困難だった...

Gipuzkoaでは非常に独特な競争力を持つ社会が、人々に闘争心をもたらしている。
チームに加わって直ぐ、異なる視点を植え付けようとした。
→トップチームに結び付く大きなパフォーマンスの余地を創り出す、育成ユニットに比重を置いた組織図を組もうと試みた。

B,Cチームのようなユースカテゴリの為ではなく、トップチームが求めている要素を念頭に置いて、選手を観察している。60%の選手達をユース出身者で構成したく、Gipuzkoa県外からもLa Realに選手を連れて来る。
(県外から連れて来た選手でも、)ユースで3年過ごした者はユース出身者の一員
La Real以上に「包括的」と言えるクラブは存在し得ないと考えている。
(他クラブより遅いタイミングの)12歳の時に最年少カテゴリのInfantil Txikiに入団してくる選手は、それまでは提携クラブで育成指導を受けており、彼らは我々に注視される存在になりたいと主体的に願い、私達のセレクションを受けに来る。
選手達のLa Realへの著しい「信頼」のレベルの高さ→選手達自身の「約束を守る/責任感」のレベルの高さにも繋がっている。

私の狙いは、各カテゴリチームに関することより寧ろ、"選手の成長"を徹底的に追及する事にあった。
←私達は「(エリートレベルの)サッカー選手」の育成を行っているから。

ここまでの取組みの結果には満足しているが、エリートレベルにあるトップチームの要求はとても高度なものなので、前進し続ける。

 

・ユース選手周りの環境

La RealのJuve Aを率いていた時、選手達との両親との距離は、「遠い程良い。」と考えていた。雑音は取り除きたく、不安や心配からは隠れておきたかった。
But 育成
費用のみでなく、選手達の周りにもたらされうる時間及び環境(:家族、学業関連、社会...etc)とも結び付いているもの。
←その環境こそが育成プロセスというピラミッドの土台
(ピラミッドの頂点は選手としての能力から成る。)
→若者とは、適切な判断より誤った判断をおかしてしまいがちなので、育成プロセスには「安定性」が必要不可欠。
(ex:外からユース選手を獲得する時、)2年契約で連れてきた場合、2年という期間は育成プロセスにとって短過ぎる。

→私達は「環境という土台」にも多くのリソースを割かなければならない。
選手達の周りには両親や代理人がいる。
私個人としては、12歳の子供達が代理人を持つことが道徳的であるとは思わない。
←その年代のサッカー選手をプロとして扱っているから。
(プロを目指すユース選手にとってZubietaが最高の環境と信じている為、条件等を交えた他チームへの移籍の話は不要と考えての発言?)

12歳の選手が代理人を持つ事については、道徳という観点で上のように述べたが、選手達の家族及び代理人といった、選手を取り巻く人々と良い関係が築けるよう、必要な事をする。クラブ側との対話を聞き入れる姿勢を示す家族と距離を置く事はできない。
→(育成プロセス/子供達を取り巻く)両親に向けて、我々の取り組みが
①何(どういうもの)で、②どのように行っており、③何故行うのか という事を理解してもらう為、それなりの時間を掛ける。

 

・選手育成に関する現在のレギュレーションについて

多くの改善点があるので、全クラブで分析に当たらなければいけない。スペイン国内ではライセンス(〔I〕Infantil, 〔C〕Cadete, 〔J〕Juvenil〔A〕Aficionado...の事?)が尊重されている。
カンテラの選手達がクラブで6-7年過ごし、ライセンス期間を満了すると、育成元クラブに利益を残さずに他のクラブへ移籍する事が可能となる。
スペインサッカー界は自己中心主義且つアグレッシブに選手のやり取りが成されている。
カンテラの選手達の権利とクラブの義務を育成プロセスの中で調和させる事が必要。

La Realは、(必要な移籍交渉では)移籍先クラブとwin-winの移籍契約(売却)を提案する。トップチームに到達した時 or その後の移籍があった場合、移籍金の~%をLa Realが受け取るオプションが付帯させる...などの工夫をしている。
←最低限できることで、特別なことではない。
寛容さが必要で、慎重に相手と話を進める必要がある。

 

・ユース指導者などについて

コーチ達はJuve Aを指導する事を考えてInfantilを指導する為に入団する者はいない。
直近の約10年間、第一段階(13-17歳;Infantil Txiki~Juve B)を指導する指導者の内、60%は且つて教職員だった経験を持つ者だ。
コーチ資格に加え、教員資格を持っている者を優先する。

育成プロセスの各段階で、子供達(選手)が向き合う事になる特定のケースの数々でうまくやれるよう助けられる専門家が指導者(コーチ)になる事を望んでいる。

 

・主な支出について

直近の約10年間、La Realはスタジアムの改修に8,000万€を投じ、またスカッド補強のために移籍マーケットにも出て行く事ができた。加えて、以後Zubietaの改修に3,000万€を投資する予定だ。

トップチームに到達する選手の育成に要する金額を知っているので、我々はユースの選手達がトップチームに到達できるよう最大限手を尽くす。
直近3年間で、トップチームではユース出身選手が30人デビューを果たした。また、ユース選手は平均して11年間クラブに在籍し続ける。
育成に費用が掛かる事は承知している。
But 毎シーズン一人のユース選手をトップチームに昇格させていくという難題に挑みたい。
→全ての世代に代表的な選手がいなければならない。以下の事は残念。
・1998年生まれ〔A.アランバリ(現La Real B)、U.ベイガ(現Unionistas CF)らの代〕の中から主だった選手を未だ輩出できていない事。
・近年GKを輩出できていない事。

提携クラブを対象に150万€を支出する。我々のアイデンティティーに関する支出であり、提携先の選手の優先獲得権に対する支出ではない。
←その権利は法的根拠を持たない無効なもの(つまり提携クラブであっても選手がLa Realにやって来るのは選手自身と合意した場合のみ?)だから。

価格が推移する資産価値に対してでなく、文化と伝統にこそ投資している
そのように出資するリスクの事を考慮する事はせず、クラブを取り巻く”家族”が私達を信頼し、それに応えていくよう動く。

我々が"勝利"したと言えるのは「モデルがうまく稼働する事」であり、欧州(EL/CL)でプレーする事のみを指すものではない。
クラブのプロジェクトの成功は、今日のトップチームでは、LaLigaで来季CLに出場できる順位につけている事にも表れている。

 

・イマノル監督の重要性について

彼は絶対的な重要人物。選手としてSanse、トップチームを経験している。つまり、周囲に、「La Realでプレーするレベルに達していない」という理由でクラブを去らなければならない者を見てきた人物である。現役引退後、クラブに戻って来てJuvenilとSanseの監督を務めた。
シーズン終了後、Sanseの監督に戻るという条件付きでトップチームの監督を緊急人事で務める「謙虚さ」を持っている。(→17-18シーズン終盤に成績不振のエウセビオから引き継いだ件か)その事でイマノルはさらに信頼/確実性を得た他、競技を別の視点から見る事ができるようになった。全てがプロセスの一部。

2018年、クラブはプレーモデルに変化を加えようとしていた。パスを繋ぐスタイルへと。その為にはトランジション、ハイラインのブロックを敷く守備、高い位置での守備などの”ツール”が必要だった。

私達がスタッフに求めるものは「名前/名声」でなく「プロフィール」である。
イマノルを形成したのは、彼の身に起こって来た事の積み重ねである。例えば、今日ではサンティアゴ・ベルナベウにいてもよく知られた人物になった。
彼がLa Realから例えばリバプールFCであったり、彼の気を惹くチームを指揮するのがいつになるかは分からない。と言ったのも、彼はいずれビッグクラブを率いる事ができるようになる人物だからだ。そこでも若くて優秀な選手を求めていく筈。

このプロジェクトはとても特別なもの。文化的重要性が大きく、全員が信用している

コンペティションの成績とモデルのあり方の関係について

Gipuzkoa県は人口70万人、出生者数は5,000人/年と小規模の地域なので、80:20(アカデミー出身者:その他)の割合を掲げ続けられるかどうかは分からない。いつの日か変えなければいけない日が来るかもしれないが、必要な時には意識的に変えなければいけない。
成功は単なる結果ではなく、プロセスに基づくものであって欲しい。モデルの勝利であって、EL/CLに出る事自体ではない。
例え敗戦するとしても、私達が育てた選手がベルナベウでプレーしても緊張しない。
勝てない時は確実に来るし、EL/CLに出られない順位でシーズンを終える事もあり得るからだ。
常に、自分達の取り組み方が満足できるものでなければいけない。
サッカーを通じて、La Realの選手やファン...の心を動かさなければいけない。そしてスタジアムでチームが起こす事に誇りを感じて貰いたい。それが本当に重要なものだと認識して貰えるよう願っている。

 

・La RealのSD着任時の変革について

願っていたようにクラブを変えていく事は難しく、変化を良い流れで行えるよう、自分のやり方を調節する必要があった。私がもたらした変革は抵抗、拒絶という反応を生み、新しくおこなおうとしているものが役に立つ事である事を分かってもらう必要があった
サッカーは同じような考えを持つ者が多くいるので、変化を起こす事は難しい。また、移行はスムーズに進まず安定性を欠く。

9つの育成ユニットを構成し、組織全体で上から下まで横断性を持たせたい。仕事は下から上に上がってくるものという事を皆がより意識するように。
私達にとって、Sanseとトップチームでは、あり方に変化はない。選手に寄り添い、人間性を良いものにしていく事が必要。選手達は積極的に関わる事、自分が行っている事の重要性を理解する事が必要。
プロジェクトは月曜から日曜日まで休みなく毎日続いていくもの、そして周りに良い人物が多いほど成長できる。サッカー界では、自分の肩に手を置いて「間違っているぞ」と告げてくれる人物が周囲にいる事の大切さをもっと評価/噛みしめるべき
そのような人物なしには進化は生まれない。所謂「友情ごっこ」のようなイエスマンばかりの組織体質でクラブ運営を進めてはいけない。皆の見識に基づいて進めなければ。

 

・サッカーの競技としての進化に対応した選手育成

素質としての能力は重要なもの。この界隈では、好む好まないに関わらず、トップスピードが抜群に速い人物は大変な価値があると見られている。
私は、特定の能力のみに注目するより、総合的に見ることが重要であると考えている。
私は176㎝と上背の高さに恵まれないGKだった。15m前の位置でプレーするようアドバイスしてくれたフアンマ・リージョ(当時CDミランデス監督)に出会えた事が幸運だった。そのおかげで1部でプレーする事ができた。

サッカーは以前より進化を重ねており、カンテラでは競技の要求の高さに応じて仕事をしなければいけない。育成プロセスを終えた時、選手達はエリートレベルの観点での評価に晒されるからだ。(強力な)対戦相手や競技の進化による要求のレベルは相応に高い。GKに求められる能力はシュートストップ力のみではない。シュートストップはGKのプレーの中で一番重要なものだが、フィールドプレイヤーと全く別の存在であってはいけない。(組立てやロングボール対応など)のプレーを行う必要がある。

 

・新たなデータ分析技術が育成プロセスに与える影響について

フィジカルに関して影響が大きい。「(走る)スピード」に基づいて選ぶのは(望ましいとは限らない)近道であると観ている。
←コーチの指導やプレー理解がなくてもピッチ上で強力なプレーを行えてしまうから。

La Realでは、先天的なプロフィールに従うわけでは無いが、私達のセレクションプロセスは、他クラブで考慮されない要素に注目する程、求める素養が広範なものでもない。
エリート、強豪相手の競技レベルの要求が大きいので、コンディション面は重要。我々にとって、データは意識するものであり、何をすべきか教えてくれるもの。上(トップチーム)から、下(ユースカテゴリ)まで使っている。データが私達の個人ごと育成プログラムに関して評価するのに役立つ。12歳が33km/hのスピードで走る必要はないが、選手ごとに何歳になったら33km/hで走れるようになるのかを知りたい

 

・(データで測れない)選手のパーソナリティーについて

あまりリーダーシップの育成に力を入れてこなかった事は悔やまれる。
チームのキャプテン任命は、その時の監督が指名し、任期は何もなければ続いていく。
←選出の理由は不明瞭。例えばチーム内での貢献、誠実さ...などで決まると思われる。
(現状はこうだが、)リーダーシップがある人材を求めなければいけない。そしてキャプテンは任期が永続するものでなくても良い。

選手育成においても、リーダーシップを身につけさせる事に力をいれなければいけない。選手人生の行く先には危機もあり、そこでは人格、気質、度胸、決断...が問われるからだ。
選手人生には多くの事が潜み待ち受けている。決断力、度胸のある人間になるために何をすべきか知っていなければならない。

キャプテンは1人しかいないが、(決断の)責任は全員が負って欲しい

 

・(オラベ自身の)チーム関係者との関係について

クラブ内部の者との人間関係がこじれるとしたらそれは私の性格のせい。あまり社交的な方ではない。仕事仲間と何人かで食事に行く事はあまりない。

また、仕事上決断を下すタイミングで意見が割れた時には、場の流れに影響しないよう、距離を置くようにしている。

 

・SD職の続投意思について

いつも言っているが、(SDとしての)マネージメントを3年以上続けると、もっと長くなっていく可能性がある。自分をやる気にさせる職に就けて幸せ。確かな成功に繋がりそうな取り組みがある。それ以上は分からない。
他の道の模索ではなく、自分の仕事が与えるインパクトについて、いくつかの疑問を抱いている。

 

・自分の選手キャリアについて

選手としては、2部のオファーを持たず、当時3部のデポルティーボ・アラベスに行った。それが、自分がどういう部分で貢献できるかという事に基づいて、自分が下した決断だった。アラベスが特殊なクラブで、選手達がどこでプレーし、何のためにプレーするかという文脈を考慮しない選手分析が私の関心を惹いた。

 

◎感想

クラブ公式ムック本のMade in Gipuzkoaに書かれているようなクラブのメソッドについての話は多かったですが、その中で彼個人の経験や考えが垣間見えて貴重なインタビューでした。

彼が力を注いできた選手育成を重んじるクラブ作りですが、きっかけとしては、選手時代に若くして指導者に転身したフアンマ・リージョの影響(CDミランデス時代に指導を受けた)でGKとしてのプレーの幅を広げた事や、自身がプロクラブの育成指導を受けられなかったバックグラウンドが関係しているのかもしれませんね。
また、La Realの会長や監督も自身を覗かせるクラブのメソッド、モデルですが、SDのオラベがどれだけ比重を負って関わっているのか気になっていましたが、当初は「選手の保護者」と距離を置きたかった。」と素直に語っていたように、彼のアイデア以外から成るところもある、という事が分かりました。実際「仕事の話は下から上にあがってくる」という事を強調していました。

かなり長いインタビューで、うまく意図を汲めず端折った部分もあります。
今回もニッチな内容でしたが、また何か気になる事があったらブログに残していきたいです。

 

J.Aperribay会長インタビューまとめ(💶クラブ財政面について)

お世話になっております。岐阜南部にいますが寒いです。
キャッチーでも何でもない題材ですが、個人的に気になりブログに残すことを決意しました。1hのインタビューを追うのは腰が重く、ブログに残すことがモチベというか燃料になって自分なりにやり通せましたw
RStv(La Real公式Youtube ch.)に動画が上がった11月時点で「お!」とは思ってましたが、まぁ良いよな、いや良くねえか。などと葛藤を抱えて揺れていたのが、この時期に11月初旬の内容を起こしている理由です。

本記事の趣旨

La Realといえば2008年に経営破綻を経験するも、現在ではクラブ首脳陣は経済状況は強固と謳っており、小澤一郎さん、木村浩嗣さんらのジャーナリストからも「健全経営」の評価を得ています。しかしその一方で下に示す統計(ソース、真偽の程は不明)のように、La Realには累積赤字があるのも確からしいです。下のデータの真偽は不明ですが、累積赤字の存在は複数人から聞いています。下の数字が正しければ、2021年6月30日時点(20-21シーズン会計年度末)で約30m€の累積赤字があるようですね。

赤字があるけど健全経営と言えるんかな?単純な疑問ながら、クラブの懐事情について気になり、J.Aperribay会長、N.Aramburu理事会員が説明する記者会見を聞いてみる事にしました。昨年も似た時期にクラブの前季収支決算及び来期収支予算について、同じ2名により記者会見を行っています。
今回皆さんにお伝えする、2022年11月4日に開かれた記者会見の様子は以下リンクからご覧ください。

www.youtube.com

会見の動画を観ることで見えてきた事を以下ざっくり記します。

○La RealはAperribay会長をトップとする理事会がクラブ内の責任者として予算を管理。
○例年秋季に記者会見を開き、同年6月末日で締め切った前季の収支+7月1日から始まっている当季の収支予算を発表。
○会見の半月~1か月後ぐらいに開かれる株主総会にて、前季収支+当季収支予算を説明し、審議を受ける。
(現地の会計年度は7月1日~6月30日です。)

クラブ首脳陣のメディアへの説明、質疑応答を見ていくことで、私と同じようにLa Realの経済状況に関心がある方の一助となれば幸いです。
それでは、これから見ていきたいと思います!

アペリバイ会長冒頭挨拶、メッセージ

(説明者:J.アペリバイ会長、N.アランブル理事会員)
本題に入る前に、ネレア・アランブル氏とは、アペリ会長をトップとする、クラブ理事会メンバーの一人で、本業は財務・税務関連のアドバイザー/コンサルタント会社経営者という方。財務の専門家!といったところでしょうか。ざっくりですが。

※ロベルト・オラベSDのインタビュー動画を紹介した時にも断った事ですが、特にスペイン語ができるわけではなく、ひたすら字幕と辞書と睨めっこして書いたものです。遺憾ながら精度を保証できませんことを断っておきます... こここうだぞ、と指摘してくださる仏のような方がおられましたら、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

ー🎙アペリバイ会長
皆様、本日はお越しいただきありがとうございます。私のメッセージにより、本会見を開始させていただきます。
La Real水中活動部門(※)のメンバー、David Quintano氏を偲び、御家族に哀悼の意をここに表します。David氏の病の進行は残酷なほどに急速でした。
David氏は同部門において大きく貢献された組織の宝たる人物で、将来を支えていく若者達にたくさんのものを残してくれました。
昨晩イマノルが(Manchester United相手の)勝利をDavid氏に捧げてくれています。この勝利をファンの皆さんと喜ぶことを皮切りに本題に入りたいと思います。
37,000人のソシオの方々をはじめとするファンの皆さんが我々に与えてくれた力に支えられて、成し遂げられたと考えています。特別なものだった昨晩のUnited戦に限らず、Reale Alenaで行われるどの試合においても、ファンの皆さんが作り上げる素晴らしい景色の下、私達のチームはプレーできています。皆さんが我々に与えてくださっている力は、La Realが成長を経て辿り着く、クラブの将来の姿の礎になっていきます。重ねて私から感謝申し上げます。

また、私はチームが成している努力にも感謝の意をここで表します。トラウマ的に負傷離脱者が相次ぐ中、チームが現在成している努力の力強さは予見できなかったものです。全ての選手に感謝しています。
La Realは3年間続けてELに挑み、この間国王杯も制しています。そして、今回のUnited戦の勝利により、さらに大きく前進することができました。また、イマノル監督をはじめとする指導者各位にも同じく感謝の意を表します。彼らは留まることなく大きな挑戦に向けてチームの成長を導き続けています。そしてロベルト(オラベSD)、模範的な場であるZubieta全体を支えるスタッフにも。
昨晩United戦に帯同したベンチメンバーを含めた選手に多く我々のカンテラ出身の者がおり、カンテラ出身者はP.マリン、J.マグナセライアといった最若手からベテランまで幅広い年齢層の者がいます。ロベルトやZubietaのスタッフによる努力の賜物であり、La Realを向上させるために彼らが下してきた決断に感謝します。クラブを支えているのは、(Gipuzokoaという地域)コミュニティ/ファンの皆さん/イマノル監督/ロベルトSD という、4本の柱であるという考えに思い至りました。
私達はクラブを大変誇りに思っており、クラブの歩みを支える皆さんに感謝し、勝利をともに祝いたいと思っています。感謝の言葉により本題の話を始めたいと思います。

この会見は、11/29開催予定の株主総会に向けて、皆さんの疑問が残らないよう開くものです。理事会の構成員任期更新が審議予定事項の一つです。ご存知の通り、現在私達は就任5年目を迎えており、11/29の次回総会において現任メンバー9人の更新 or 新規メンバー選出が行われます。5年前は11/13、今年は11/21が任期満了日です。私達は基本的に現任9人全員もしくはその大部分の続投を希望しています。
私達は次回株主総会で、簡単にはまとまらなかった昨季収支の数字を発表してきます。私達は赤字を出してしまいました。昨年6月時点では赤字を出すことは想定していませんでした。昨季収支の数字に加え、La Realのみならずサッカー界全体にとって難しいものだったここ3年間の収支の数字を私達がどう見ているかということを説明します。LaLigaの他クラブと比較するとLa Realの数字は良いものであると言え、私達はこの数字という結果について落ち着いており、満足しています。この数字の内訳を、収入の縮減がもたらした赤字の内訳を理解しなければいけません。収入がいくらになるか、私達は予見することができませんでした。とはいえ、総じて私達が執り行ってきたこの3年間のクラブ経営に満足しています。
(私の隣に座っている)ネレアから収支の数字について説明し、その後、私が話します。

※La Real水中活動部門について
知らなかったので、軽く調べてTweetしました!
皆さんもバスクでダイビングをするなら是非La Realで!w

昨季(21-22)、今季(22-23)及びここ3年間(19-20~21-22)の収支状況について

ー🎙ネレア理事会員

21-22季の年間収支について

次回株主総会でもお伝えする、昨季(21-22)の年間収支は次のとおりです。
収入:142.994m€
支出:138.693m€
損失(赤字):4.301m€

この損失(赤字)は、主にTV放映権料収入が当初予定より少なくなったことに起因します。
LaLigaは21-22季終盤、COVID-19の状況に合わせてテレビ放送契約の再調整により、LaLigaが受け取るテレビ放映権料収入は少なくなった。これが各クラブのTV放映権料収入に影響をもたらし、La Realはこれにより4m€の減収を見込んだ。
(※対国外契約のみでなく、国内の放送各社、ホテル、レストラン、喫茶店...etc相手の契約放映権料の改訂を行った。)
クラブはシーズン当初より、(この当初予定されていなかった収入減少がなければ、)昨季の年間収支をわずかな黒字で終えることができると考えていました。

過去3年間(19-20~21-22)の収支について

私達が”COVID-19期間”と見做している期間は19-20に始まり、21-22まで3年間続いてきました。21-22序盤、私達はこの1年間の経済状況の動向を十分に予見できていませんでした。結果として、私達は昨季(21-22)もCOVID-19の影響に苦しみました。
19-20は20.607m€の黒字で終え、20-21は4.598m€の赤字で終えているため、COVID-19期間である19-20以降の過去3季の平均で見れば、1季あたりの年間収支は黒字です。
LaLiga/欧州の他のクラブと比較すれば、「COVID-19の悪影響を相対的に抑えることができた」と言える数字であり、22-23以降の3季にわたる1季あたりの平均年間収支を20.500m€黒字と見込んでいる。

強調したい数字として、21-22のEBITDA(※)は16.765m€でした。この数字の大きさから、私たちは昨季のクラブ経営のあり方に自信を持っています。
※:税引前収益+支払利息+減価償却費+返済額。組織ごとの収益計上力を比較するため等に使われる数字らしいです!

~参考~
(La Real 過去3年間:19-20~21-22の収支)
19-20:20.607m€
20-21:△4.598m€
21-22:△4.301m€
年間平均:3.902m€(黒字

今季(22-23)の年間収支の見積もりについて

最後に、次回会合(11/29)で承認を受けにいく22-23季の数字に言及します。我々は128.413m€の支出、129.089m€の収入、つまり6.75m€黒字を見込んでいます。この見積もりについて、2つの重要な点を説明します。
①この見積もりは7/30に算出を完成していた。つまり、イサクの放出、サディクの加入のような、この日付以降に行われた移籍契約以前に見積もりを終えていたこと。
②La Realはソシオ会員費を上げる予定はありません。

総括

ー🎙アペリバイ会長
来季の収支の数字は偉大なものです。この数字は11/29にKursaal(※)で行われる集会で審議にかけられます。昨季の数字については、本年6/1時点では僅かな黒字で終えられると想定していたため、残念です。昨季はカルロス・フェルナンデスの負傷による長期離脱に応じ、アレクサンデル・ソルロス、ラフィーニャ・アルカンタラを加入させるという追加の費用支出を伴う対応を行いました。しかし、この追加執行について、このチームが野心的に挑戦し続けるために必要な支出であると考えています。彼ら2名はクラブが設定目標に迫るために、重要な仕事をしてくれました。

また、テレビ放映権料収入が減少したことで、私たちは4m€少なく収入を見積もらなければならなったことは手痛かったです。しかし、私たちは自分達の目標と収支のやりくりを両立させることができまし。
COVID-19が収入に与える影響を予想することは簡単ではありませんが、概ね、私達は過去3年間(19-20~21-22)の収支のやりくりに満足しています。そして、欧州のコンペティション(EL/CL)に挑戦し続けるという我々の目標を考えれば、他のLaLigaのクラブと比較してクラブの経済状況はかなり良いものであり、ソシオの会員費を上げることはありません。

疑問に思っている点を明らかにしようとする貴方達(記者サイド)の質問に答えます。

※Kursaal:San Sebastiánの砂浜に面したイベント会場。夜ライトアップした姿がミルフィーユに似てる気がします。

質疑応答

(質問者:出席記者、回答者:J.アペリバイ会長)

Q1. 昨季(21-22)の収支について質問です。昨年私達が説明を受けた数字と本日説明を受けたもので、支出(執行額)が増えているのは?

A1. 収支予定額は4月中に6月中にも案が作られ、移籍市場の閉幕を待たずに7月末に完成させています。したがって、7月末以降の移籍市場に関する動向によっては、増減があり得ます。

Q2. 「La Realは良い経済状況にあり、(これに関して)落ち着いています。そして収支の都合を合わせるために選手を売ったり、ソシオ会員費を上げることはありません。」というその発言はこの例年行われる(経済状況に関する)記者会見において慣習的なものですが…

A2. 実際、この3年間は経済的に難しい時期でしたが、La Realは今良い状態/健全な状況にあり、力強い経済状況を誇っています。今季の収支の数字の都合を合わせるために、どの選手も売ったり追い出したりする必要が無く、A.イサクの放出先を探し求めてもいませんでした。そして私達は早い内に来季の予算の見積もりを始めています。今季同様、来期も予算のために一人たりとも選手を売る必要はありません。

Q3. LaLiga勢で言うとアトレティコバルサのようなクラブがCL決勝トーナメントに残れませんでした。これは(今季予算面において)、想定されて無かった敗退です。La Realについてアペリバイ会長がいつも口にし、(クラブが)実現してきたように、ELに出場することを(各季)の予算に計上することはどのくらい重要な事ですか?

A3. とても興味深い質問だと思います。実際、収支額は当初私達が想定した通りにはなっていません。ELに出場した近年の過去数シーズンにおいて、変動費用の支出額が当初予定額を超えてしまっています。そのため、(前述のようにCOVID-19による減収があった)収入の数字に加えて、支出の数字も非常に重要な意味を持つものです。
このことから、持続可能な収支管理を行うには、理想を語るなら、全ての代理人が、La RealがEL/CLに出場する場合/しない場合の収支への影響を踏まえて動く必要があります。
分配金はチームの大会成績に応じて支給されるため、前もって収入の見積もりを得ることは難しいです。ELの話ばかりすることもありえません。
←収入:EL/CLに出場することで、(コンペティションで残せた結果に応じて)得られる分配金という変動的な収入がある。概ね10~30m€の間で変動する。
/支出:EL/CLに出場した場合に、コンペティションを追加で戦うために賃金、ボーナスが追加で要支出となる場合がある。(これらも変動費用

しかし、あなたの質問に基づき、経済的な見通しが無ければなりませんよね。移籍市場における代理人や仲介人は、これらの変動収支を考慮に入れて動いているわけではありません。
スポンサー、ソシオの方々は収支計上の裏にあるこの複雑な関係を理解してくださっています。私はこのことが、La Realが収支のやり繰りを概ね健全に行えているという「成功」の理由の一つであると考えている。La Realの経済状況は現状、数字上堅実です。例えば、15年前に我々は破産手続き、増資(株式発行?)を行わなければなりませんでした。クラブ解体の可能性もありました。その15年前の時期が最後の経済危機です。この危機に対し、クラブ解体を逃れるべく、La Realは裁判所の仲介を受け、債務を返済しました。

今は健全な経営状況にあります。私達が掲げているEL/CLへ挑戦し続けるという目標の達成も、経済的には可能な状況にあります。ただ、あなたの質問に対して、前述の可変的収支の影響が強く在ることを伝えておきます。選手、クラブの意志に因るところが大きい移籍の成否について、私達は可能な限り上手く対処していかなくてはなりません。尚且つ、より良いスカッドを求めていくのに萎縮してもいけません。今では、これまで40m€以下だった予算が70m€以上になり、近年この予算規模の成長がクラブ運営、各コンペティションの成績に良い影響をもたらしています。La Realが今後14年間、過去14年間そうであったように、経済的に成長していくことを望みます。

ついては、"全てのことを総合的に考慮しマネジメントしていく"ということが、あなたの質問に対する直接的な回答です。そして、このことが、持続可能な収支見積もりを行うための解決策であり、La Realは成長を続け、ファンに夢を見せ続けます。

Q4. 会長は、「La Real及び他のクラブが抱える複雑な状況(COVID-19が年間収支の見通しを難しくしている点のこと?)がありながら、La Realは殆ど損害を被っておらず、周囲にはそうではないクラブがいくつかある。」と説明されました。しかし、各クラブはそれぞれ同じような目標に向かって戦っています。恐らく、あなたが明確に説明したLa Realと同じ目標(:欧州に挑戦し続ける)に向かって。

A4. そうですね。私はこの5年間は、La Realが経済的に難しい状況にありながらファン/選手/クラブが夢を抱いた期間であり、経済的により強靭になった5年間であると考えています。今の、そしてELグループリーグ首位通過を決めた昨晩(11/3)のLa Realを写し出す写真はとても偉大なものではないですか? なので、選手/ファンと喜びを分かち合う会見を行いたいと思っていました。

会見前、私はある人に、先の晩のInter(ミラノ)のような、昨日のLa Realの状況について話した。La RealはInterと同じくグループリーグ最終節の試合に敗れたが、Manchester Unitedが含まれるグループで、怪我人を出しながら、ファンのために熱心に取り組みました。昨日成し遂げたこと(ELグループリーグ首位通過)はファンの皆さんの応援のおかげであり、美しく、そして歴史的な青写真を残すことができました。La RealはCOVID-19というパンデミックに見舞われていますが、(掴み得る)全てのことを成し遂げたいと願っています。

Q5. 会長は、支出額が見積もりに及ぼす影響についてお話しされましたが、La Realのスカッドが必要とするコストは比較的少額ですが、選手の入れ替わりの後どれぐらい上がりましたかね?

A5.  私達は株主の皆さんにそれを説明する義務がありますので、株主集会の場で私達のスカッドが必要とするコストの具体的な内訳をお伝えしたいです。

Q6. 会長のお話ではファンについての言及が目立ちましたが、La Realは、収支赤字の埋め合わせのためチケット価格の上昇を検討していることが想起されます。この赤字をどう埋め合わせるかは(先程の説明からは)見えてきません。他のいくつかのクラブの見通しでは、チケット価格は上がっていますが...

A6. 私達は他のクラブの事情を注視しています。La Realの観戦チケットは疑いなく安い部類です。チケット価格はクラブの経済状況はクラブ内のみに留まらず、クラブを取り巻く人々にも影響を及ぼすものです。私たちはかつて破産を経験していることを意識していて、クラブは破産以降に予算規模が増大し、これにより多くの好影響を受けています。私達はファンの方々にも多くの貢献をしていきたいと考えていますが、チケットについては多くの問題がありますが、チケット価格、そしてソシオ会員費を上げることなく予算を組むことができました。この決断が賢く、また将来に向けて最高のものであったかどうかは分かりません。なぜなら、過去10~15年間会員費を上げなかった事で、部分収入における他クラブとの競争力は見込めなかったからです。ですが、会員の方、ファンの方にとっては、誠実で最良の決断だったと思います。

Q7. La Realは昨日ベスト16への進出を果たし、喜びや名声を得られましたが、別問題として、今季のEL出場による収支の見積もりは(まだコンペティションが続いていくことにより、)難しくなりました。

A7. 先に述べましたように、例えばEL出場による収入については、大会をどこまで勝ち上がれたか、そして過去の成績、観客数にもよる。選手の出場給も変動します。希望を語るなら、ELに出る利益は経済的なものではなく、ファンに与える感動、喜びにこそあります。
また、私達の理想とは、クラブがELに出場することで収入を増やし、支出を増やさず、ファンの方々が満足し、クラブを誇りに思ってもらうことです。Manchester Unitedと競い、私達は3月のラウンド16を戦える。これは私が夢見てきたことであり、その先の4月の準々決勝、5月の準決勝、そして6月の準決勝を楽しめる事を望みます。これが私達の目標で、現状我々が向かうのは3月のラウンド16です。ファンの皆さんの期待に応え、La Realがより偉大なクラブになるように、我々は戦っていく。

Q8. 昨日の試合はどうでしたか?

A8. この会場に、Angel Oyarzun副会長が同席しており、私の席の近くに座っています。彼には既に話したことですが、私達は今日まで辿り着くのに、全てのコンペティションで苦しんできました。今では、私たちは試合を楽しもうとしています。試合前に、(早く)終わることを望んだことも何度もありました。私達がすべきことは試合を楽しむことであり、その上選手たちが凄く良いプレーをすることです。良いプレーを継続的なものとし、試合を最大限楽しもうとしてきました。そして、偉大なクラブであるManchester Unitedとの対戦を楽しみにしてきました。この対戦について、選手、ファンの方々を気に掛けてきました。

Q9. 会長が説明した7月末までの収支の数字は、イサクの放出というニュースを盛り込んだものではありません。一方、ロベルト(オラベSD)は私達に直近のインタビューで、記者が欲している情報(:La Realが今後大きな契約、選手契約に向けて準備しており、La Realは2022夏の移籍市場では例年の支出額の規模を少し超えるだろうこと)を少し教えてくれました。
イサクの放出後、La Realはスカッドの構成力を同レベルに維持できるよう準備していたはずですが…

A9. 説明してきました通り、私はこの会見ではイサクの放出より前のデータのことを説明してきました。 2022-2023季の予算を組んだ時、私達はLaLiga開幕(8月中)まで10日ほどしか残されておらず、それまで、11m€の契約予算しか持ち併せていませんでした。La Realはその予算を超えて市場に出て行くつもりはなく、イサクの放出がなければ、代わりの選手を探しに市場に出て行くことはありませんでした。ただ、前もって監督(イマノル?)と、当時、「多くの怪我人が出ているポジションはどこか?」という話をし、その結果、9番の獲得をリクエストされました。

私達にはA.ソルロスと契約できる可能性がありました。ただし、私達が昨季比でスカッドの競争力をレベルアップさせたいと考えていたのは事実で、当初はソルロスと契約しない可能性の方が大きかったです。しかしここで、ニューカッスルが私達の展望を一変させました。それを受け、私達はイサクの退団を踏まえて、どれぐらい累積赤字を減らせるか、イサクの代役候補の獲得はできるか、選手達の給料はどうするか、どの選手が翌年契約満了を迎えるか、その内何人契約更新を行うか…こうした研究を私たちは今夏ずっと行ってきました。そして、向こう一年間、経済面、スポーツ面のタフさを確保して戦っていくための決断をしてきまし。
私達には、スポーツ面をより強化していくという野望があり、私達は2つの指針を持っています。一つは選手達を"より遠く"へ導くことです。選手達は皆勝利を収め、そしてLa Realに在籍し続けたいと思ってくれています。選手達一人一人が各自の目標に到達する為のサポートも行っていきます。

もう一つはファンの方々へ与えられるものについてです。私達を応援してくれているファンの方々は皆歓喜という感情にあり着くことに値します。そのためには、「支出を増やさない」事ばかりを考えるのではなく、「どのように持続可能な予算を組むか。どのようにスポーツ面を向上させていくか。どのようにファンの皆さんの役に立てるか、どのように毎度のように幸せな気持ちになってもらえるか。どのようにチーム全員が満足して働けるか。」という事を考えながら予算組み、毎年の経理業務に取り組んでいます。
例えば、昨季C.フェルナンデスが負傷したため私達はA.ソルロスを連れてきまし。また、昨季冬にラフィーニャの到着を強く望み、達成しました。また本年6月初旬、LaLigaから、当初予定より放映権収入が4m€少なくなることを告げられました。1月に分かっていればと悔やみました。少なくとも(昨季の収支やりくりについて、)別の考え方ができました。しかし、私達が取り組むのは、年間収支を見ることであり、「持続可能」となるよう諸手続きを行うこと、クラブをより良いものにしていくことです。

そして、①競争力を高め、高いレベルの戦いができるよう、クラブの選手/コーチを助けられるよう努めること、②ファンに喜びをもたらすこと です。この双方が両立し、組み合わさるよう私たちは取り組んでいます。そして、私達のトップチームには2000年以後に生まれたとても若い年代の選手達が加わっています。さらにタケやモモのようにとても若い選手を外から連れてきています。彼らのような極めて若い世代の活躍は、1999年生まれのスビメンディがベテランであるかに思えます。
La Realは経済状況、スポーツ面が双方より良いものになるよう、そしてファンの皆さんが喜べるよう取り組んできました。

Q10. 1月(冬の市場)において、何か予定している動向、取引はありますか?

A10. 予定はないです。誰も出て行かない限り、トップチームに既に25人登録選手がいます。

Q11. 去る予定の選手はいますか?

A11. いません。ロベルトSD、イマノル監督との話で、誰かの放出、獲得という話は出ていません。

Q12. 以前、マンチェスター・ユナイテッドのディレクターとLa Realを象徴する一人であるX.プリエトと貴方が食事している様子の写真を見ましたが…
(2022年9月のユナイテッド戦(away)、選手、スタッフとともにレジェンド2人(X.プリエト、L.アルコナーダが同行したことが報じられています。↓))

real-sociedad.diariovasco.com

A12. アルコナーダもいましたよね?ルイスとシャビはLa Realの素晴らしい2つの時代を代表する選手であり、さらにクラブを象徴する偉大なカピタンです。(シャビの現役時代、)シャビとはいつも一緒にいたし、ルイスとも個人的に素晴らしい関係を築いています。

Q13. 最近承認されたスポーツ法に対し、一部のクラブは反対の意を示していますが、La Realはどう向き合っていきますか?

(以下特に回答の理解に自信がありません…)

A13. 放映権ビジネスについて、特に国外向けに成長させることがとても重要なものです。放映権については、各クラブの管轄となる可能性もありますが、私達の環境はLaLigaが総括的に管理しています。これはスポーツ法が定めていることです。私達の試合の放映権についてもLaLigaの管理に追随しています。
ただし、プロ化していないカテゴリーの試合にも明確に放映権(料契約)がある一方、プロカテゴリーにはありません。(LaLigaSports TVで無料で観られる2部のことを言及しているかも…)
この違いについて、私が理解しているところではありません。

Q14. 会長はこの会見で、"チケット価格の引き上げを行わないという決断について、将来クラブ経営者が賢明でない決定だったと考える可能性がある"ことを認めています。収益性の高さを追及する経営者にとっては、少しショッキングな決断だったかもしれません。決断の理由はどこにあり、その見返りはどこにあるでしょうか?

A14. 2008年のLa Realの経済危機は多くの人々に影響を及ぼしました。COVID-19というパンデミックも不安定な経済状況をもたらしました。私達は、"将来に向けた適切な決定とは、ソシオからの収入を増やすことであるかもしれない"と考えましたが、同時に、ソシオ会員、その他の人々の立場から考えると、会員費を増やしたくはありません。これが決断の理由です。

Q15. 会長は、"夢を見ており、意欲があり、構想(イメージ)を持っている"と私達に話しました。任期満了を前にして、今尚成し遂げたいことが沢山あるからこその発言と思います。あなたがやり残していることとは何ですか?

A15. 私は自分個人の考えのみにより働いているわけではありません。クラブの理事会に所属しており、あなたも5年前に撮影された写真(メンバーが映ったもの?)を見たことがあると思います。そして、理事会で話し合ったことが総会の審議に掛けられます。だが、私個人の考えを述べるなら、
①強いクラブであることを目指して働きたい。
②Zubietaというとても素晴らしいプロジェクトに取り組み続けたい。
③継続的なものであり、強力に推し進め続けているこの夢のような状況を維持したい
と考えています。このため、私は自分の続投を希望し、我々によるLa Realの理事会体制を支持して欲しいと株主の方々に要請しました。

Q16. あなた方のプロセスを通じて、2008年の経済破綻以降クラブは成長してきて、現在のような素晴らしい絵が描けるクラブになっています。 しかし、私たちは今回の貴方がたの任期満了にあたり、あくまで「再選/否」という点からアペリ会長らの体制によるプロセスを見ており、単純に会長を選ぶ選挙という見方では見ていません。
つまりお尋ねしたいのは、素晴らしい取り組みをされてきた貴方達の体制とは別に、La Realの会長に立候補したいと思う人はいないのでしょうか。

A16. 他の候補者がいるかどうかはその方の判断によるものなので、私達次第で定まるものではありません。記者である貴方の立場からすれば、会長選挙についての話をする人は多くはいないのかもしれません。その質問に私達が回答すべきかはわかりませんが、続投を望む私自身は、できる限りの仕事をさせていただきます。

Q17. 会長は、選手達に「La Realというクラブに所属したい。このクラブに居続けたい。」と思ってもらえるように取り組んでいると発言されましたが、アルグアシル監督、オヤルサバル選手との契約更新についてはどうなっていますか?彼らはLa Realに留まりたいと思ってくれているようですが…

A17. イマノルとは8月に(彼の将来に関する)話をしました。それ以来、私達はロベルト,イマノルと歩み続けると告げることができるタイミングを探しています。8月の会話で、イマノルに「君はこのクラブの人間である。」と告げました。私達は彼の指揮の下、日曜→木曜(ミッドウィーク)という週2回のスパンで試合をし、その中でチームはインテンシティを保つことができ、イマノル自身は日々、そして各試合に取り組んでいます。イマノルの将来について、間もなく明らかにできることを保証します。

ミケル(オヤルサバル)は、Zubieta、そしてクラブの柱であり、クラブが成長していくために最も重要な人物の一人であると考えています。私達には彼という最も偉大なリーダーがいて、プロ選手生活をずっとLa Realで過ごして欲しいと願っています。彼は今尚とても若い選手で、この先多くの素晴らしい期間が待ち受けています。私は、ミケルら1996~1997年生まれ+1999年生まれの世代が示してきたプロフェッショナルな姿勢に感銘を受けています。彼らはSanse(Bチーム)から昇格してきて、皆同じように素晴らしいプロフェッショナルです。La Realには大変偉大な未来が待ち受けています。私達は若いチームであり、選手達が成長していくよう、駆り立てていく必要があります。ミケルには、仲間達を引っ張っていく模範たる存在であり続けて欲しいと願っています。

Q18. イマノルがやってくるまでは、2008年以来La Realには各監督の体制に安定感がありませんでした。監督交代が相次ぎ、続いても2年間という様相でした。この状況がイマノルが就任したことで変わり、監督の地位が安定しました。ベンチの体制が安定するのは、達成されてきたようなスポーツ面の目標をクリアするためにとても大切な事ではないですか?
また、イマノルがもたらしているような継続性は、ホームグロウンの監督の手腕から生み出されるものではないですか?

A.18 私は14年間会長として過ごしてきて、長く続けてこられたことを最も誇りに思っています。この間、ホームグロウンの監督としては複数名いた。名前を挙げるとJ.アラサテやイマノルであす。イマノル監督については、他のクラブで指揮を執ったことがない人物で、私はLaLigaの監督事情において、彼のような例を他に知りません。私達は常に理事会で次のようなことを検討してきました。私達の監督が、
・La Realの選手達を育て上げられる監督であるか。
・選手育成に加え、その監督が率いるトップチームが挙げる成績も伴っているか。
つまり育成/コンペティションにおける成績の両面がとても良いものであるかどうか。
と検討を重ねてきた。特段理事会においてこの質問を投げかけたことはありませんが、理事会のメンバーが皆監督の続投/否について皆同じ意見であることを確認してきました。私たちが最も誇りを感じているのは、La Real育ちの監督たちにトップチームを率いる機会を継続的に与えてきたことです。なぜなら、彼らはJuvenil, Sansenを渡り歩き、トップチームに辿り着いた者達だからです。この例の該当者がイマノルです。私たちはこの決断にとても満足しています。イマノルとの会話は並外れて良いものであり、彼は素晴らしい人物です。私はイマノルとロベルトをとてつもないデュオであり、クラブは彼らとともにあるべきと考えています。Zubietaでは、改良, 評価/自己評価というサイクルが継続的に行われており、La Realがスカッドを最高の選手達で満たすこと、彼らが素晴らしいプレーをしていくことを期待できる。そうした体制の下、2年半働き続けている。このことはイマノル監督の大きなメリットです。

Q19. マルティン(スビメンディ)の契約更新について、何故違約金を上げなかったのですか?マルティンにクラブに残って欲しいと思っているファンにメッセージをお願いします。

A19.私はマルティンが選手としてのキャリアをLa Realで全うしてくれるかどうかは分かりかねます。彼は世界最大規模のクラブに行けるチャンスがある選手です。勿論La Realに残って、チームを勝たせてほしい。彼はクラブの柱です。違約金のことに関しては、私の意見は最重要の要素ではありません。なぜなら、マルティンが移籍を望んだ際、どれだけ私が彼の熱狂的ファン、信奉者であるかは、彼の望みには敵わないことだからです。仮に移籍することになった場合、マルティンがどのように出て行くかについて話しましょう。60m€という違約金は最高クラスのものです。この数字の違約金は、私たちが好み、パフォーマンスに満足している選手に設定するものです。マルティンのプレー全てが満足いくもので、クラブの目標を共有して欲しいと願います。LaLiga優勝をクラブとともに勝ち獲って欲しいし、これからもクラブの一員であり続けて欲しい。
75,80,100m€など、私は違約金が高くなり過ぎることについてですが、60m€であった場合と同様に獲得に興味を抱くクラブとの交渉の余地が十分にあるかどうかということについて、懸念を持っています。勿論、必ずしも交渉しなければならないわけではありませんが。私がひどく心配しているのは、獲得を目指すクラブが、マルティンに設定されている違約金について、承知しかねるという事態です。

Q20. 契約更新に関して、2024年に契約満了を迎えるP.マリンの更新がプロジェクトに含まれているかどうか、私は把握しておりません。ですが、彼は(試合によっては)現在トップチームで先発出場している選手であり、今後数か月間において契約更新合意に値する選手と考えます。

A20. そうですね。P.マリンはトップチームで台頭している選手で、並外れたパフォーマンスを見せています。ただ、今季のトップチームでの活躍は突然の覚醒とは言えず、サプライズでもありません。La Realには個々人ごとの成長を促すプログラムがあり、パブロはこのプログラムで最大レベルのところまで到達していた選手です。クラブは彼を信頼しており、今後も彼のプレーをトップチームで目にしていくでしょう。契約の進捗については、彼とのコミュニケーション次第です。

Q21. (質問者)個人として、いつも「La Realは次の対戦で敗退してしまう。何も掴み獲れない」という弱気な考えを探してしまう、おかしな考えが常に付きまとっていました。
それが今は、例えばブダペスト(EL決勝会場)でLa Realを見る事ができるのではないか、というように私達はその見方を変えつつあります。これは望ましい野心でしょうか?理事会はこのことをどう見ていますか?

A21. 私達は常に次戦は敗戦するだろう、とは言わず、私達は勝ちにいくと公言してきました。私達は日々向上するよう一段一段階段を上がるよう取り組んでいます。
過去を振り返ると、La Realは3試合/週を戦えるチームではありませんでした。私達は国王杯で早々に敗退してきました。週に何試合も十分な戦いを見せることができなかったからです。La Realはコンペティションの都度強くなり、2013年に強豪マンチェスター・ユナイテッド相手に戦った時と同じように力強くプレーしてきました。私たちは、結果としてどれだけ歩みを進められるか、そのことに拘り、順位にどのように反映されていくかはいざ知らず、向上に努めています。前向きに決断し、階段を上がろうとしています。

Q.22 今からほとんど10年前の2013年、La RealがManchester Unitedと対戦したGL1度目の対戦の日から、変化がありました。La RealがUnitedと同じ舞台で戦えたと好感触に話をする人がいます。多くの人がそう言っているかは知りませんが。
しかし、今は周囲が良い夢を見ることができています。La RealとUnitedとの話が人々の話題に上がる事について、以前も(会長の周りで)そんな経験がありましたか?また、どんな感想をお持ちですか?EL(/CL)に出場し始めた時、La Realは出場できることにパニックになっていましたが、雰囲気が変わってきたように思います。

A22. ELは世界でも最高クラスの舞台です。La Realはその舞台に時々招待されているチームです。私達がEL/CLを意識していなければ、ここまで成長できていません。その舞台で最高のチームと競いたいと願っており、その為に私達は強くなり、都度向上することを目指しています。Unitedはその舞台の常連チームであり、世界最高のチームの一つです。それに対し、私達は時々Unitedらが待ち受けているその最高の舞台に招待されるチームであるということを意識していないといけません。

[最後の質問]
Q23. ELの話が質問等で出てきましたが、国王杯でどこまで行けるか、という話は出てきていませんよね。会長はクラブがEL決勝会場であるブダペスト、及び再び国王杯決勝に行けると考えていますか?またチームの成長ぶりについてどう見ていますか?

A23. 問題は試合の日付というタイムリミットが決まっている事です。試合日を度外視すれば、回答は次のようになります。LaLigaを制することも目標にしていますし、プレーするコンペティションにおいてはできる限り全試合勝ちたい。いつ達成できるかは分かりません。しかし、勝利/タイトル獲得によってファンの皆さんを喜ばせたいという気持ちは常にあります。
La Realの道筋は、一段一段階段を上がること、月曜から金曜まで良いアプローチを続ける事です。マッチデーである週末に世界一のチームになることは、達成し得るとは言え、難しいことです。しかし、月曜から金曜にかけて世界最高のチームになることはできるチームです。私たちは最高のトレーニングを積んでおり、それにより成功に近づこうとしています。スタジアムでの世代を超えた交流を達成し、経営を強固に進め、そしてタレントの獲得を試みる。これが並外れたスポーツ面の目的を達成するために、私達が野望として抱いている事です。
目標達成の日付を設定することは難しいです。Manchester UnitedらがいるEL/CL常連クラブのステージに近づくことは、以前までは実現不可能ではないかと思われていた“並外れた目標”の一つです。ただ、これは私達が達成できるよう努力していかなければいけないことです。La Realにはロベルト(オラベ)のような目標に向けて統率してくれる人間がいます。そしてイマノルがいる。彼らはともに最重要人物であり、La Realの願望を最高の形で表現してくれる。彼ら2人のようなリーダーを持つことは純粋な願いです。La Realのメソドロジーを用いてクラブが進んでいく道に障害を見つけ、その障害を避けてさらに進んでいけるよう最高の決断をしていく。そんな2人です。
~質疑応答 終了~

皆さん、本日は誠にありがとうございます。そして、これまで何年間もクラブのために時間を割いてくださったこと、お付き添いいただけたことに感謝申し上げます。La Realは皆さんとともに歩み、成長を続けていきます。

 

~感想~

いかがでしたでしょうか。私は今回初めてしっかりアペリバイ会長の話を聞き、これまで人物像も曖昧でしたが、次のような感想を持ちました。
私はアペリバイ会長の説明、質疑応答の受け答えを聞き、財政に関する記者会見においても"ファンを喜ばせる"という言葉が何度も出てきて、クラブが何を大切にしているかが窺えました。I.アルグアシル監督、R.オラベSD、J.アペリバイ会長はいずれもスポークスマンとして、その語り口からクラブが何を目指しているか、ファン/地域を大切にしていること を記者との対話の中で伝えてくれる人物です。どのような狙いをもって何に取り組んでいるかという説明には論理の破綻がなく、三者から同じような事が聞けることから、クラブが一体となってプロジェクトを進めていることが分かります。

結局何が言いたいかというと、アペリバイ会長の考え方、人物像が見えてきて、それが自分にとって、またクラブにとって望ましいものであるように思え、安心しました。ということです。
ブログとしてはニッチな内容でしたが、多くの人に少しでも触れていただけると嬉しいです。
また、これからも機会に恵まれれば、こういった個人的に気になる題材に触れていきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。

🌳La Realの育成、提携クラブとの取り組みについて(2/2)

前置きは前Partに任せ、省略いたします。本記事では、前Partで紹介したように、La Realの育成メソッドの根幹を担っている、提携各クラブが、実際にどこにあるか、そしてどんな選手を輩出しているか、というところを記していきます。
提携クラブの一覧は以下クラブ公式サイトに掲載されています。各クラブのescudo、特徴的ですよね。スペイン北西部のユースカテゴリの試合を追っている方々は、幾つか見覚えのある方がおられるかと思います。

fundazioa.realsociedad.eus

前Partのリンクはこちらです。

wesleysni.hatenablog.com

◆提携クラブの数など全体的な統計について

色々書いていく前に、まずここに触れておきたいと思います。統計と言うと仰々しいですが、数字に触れる程度です。
まず私が本記事執筆時点(2022/12/20)で把握しているLa Realの提携クラブの数は92。これは上リンクのページに掲載されている90クラブとリストに載っていない2クラブ{ÖIS Fotboll(スウェーデン/Göteborg市)、徳島ヴォルティス(日本/徳島市)}を加えた数字です。
この2クラブを公式サイトの提携クラブページにリストアップしていないことについて、何か区分けはあるかは不明ですが、この記事では提携クラブの総計を2クラブを加えた92として捉えます。

これらクラブの、地域ごとの分布はどうなっているでしょうか。下図をご覧ください。

色分けが分かりにくく恐縮ですが、下の地域とそれに対応する円グラフ中の色を示したリストですが、シェアが高い順に左上から横に並んでいます。割合でなくて数字にすると以下の通りです。
また、パーセンテージの数字、下位4地域が潰れてしまってますが、いずれも1%です。
(域内提携クラブが多い順に)

ギプスコア県・・・71
ラ・リオハ県・・・7
③ナバーラ県/州、ラプルディ・・・各4
アラバ県・・・2
カナリア諸島サラマンカ県、スウェーデン、日本・・・各1
※ラプルディとは仏領バスクの、バスク地方内での1地域です。司馬遼太郎の街道がゆく~南蛮のみち~にも登場するカンドウ神父、元フランス代表のB.リザラズの出身地・サン=ジャン=ド=リュズなどが有名ですね。

さて、上グラフの分布を見ていきますと、やはり圧倒的にギプスコア県のクラブが多いです。Made in Gipuzkoaを謳い、カンテラーノの8割Gipuzkoa県民で構成する」ことを掲げているだけありますね。
また、シェア2位がバスク7領域でないラ・リオハ県というのは少し意外。これには、スペイン1部2部のクラブを擁するビスカヤ、アラバ、ナバーラの各県が睨みを利かせていることが関係しているのかなと勘繰っています。逆の立場で考えれば、ご近所クラブに自分達の地域出身の有望な若手が攫われうるなんて嫌ですもんね(笑)

◆Gipuzkoa県内の提携クラブについて

まず、Gipuzkoa県内での提携クラブの分布を下の地図、グラフとともに見ていきます。

Gipuzkoa県地図(コマルカ別に色分け)

Gipuzkoa県内分布

おい何か歪な地図だな?と思われてると思います。拙作ゆえお許しください。何で地図自作した?→著作権侵害の回避です。
棒グラフの色分けは地図のコマルカの色分けに対応させています。
Q1. 地図上の灰色塗りつぶしの地域は何?
A2. 分からなかったので、調べてみたものの複雑かつ要領を得なかったので、とある現地在住の大学院生に質問しました。
山岳地帯及び牧草地帯だそうです。かつ共有地として管理されており、人が生活する地域ではないそうです。
ということで、他の地域と一線を画しており、提携クラブも域内に無いので、本記事には関係しないものと思ってください。

Q2. コマルカ?
A2. ムニシピオ(San Sebastián, Irún等の県内の地域区分)をいくつか内包している地域区分です。そのため、ムニシピオ<コマルカ<県(provincia)<州(Comunidad autónoma)という並びです。

続いて、どんなクラブがあるか、見ていきたいと思います。

Real Unión

所在地:Irun/Bidasoaldea

フランス国境に面した地域ですね。
レアル・ウニオンはウナイ・エメリが2021年に筆頭株主となり、現在は兄のイゴールさんが会長を務めているクラブです。ウナイの祖父、父がレアル・ウニオンで長く選手として活躍しており、国王杯を過去4度制していることでも有名ですね。今季は国王杯1回戦で1部でプレーするカディスCF相手に勝利したことでも話題になりました。

現在同クラブのトップチームが1a RFEF(3部)と競争力の高いカテゴリでプレーしていることから、多くのLa Real若手選手が力を伸ばしにローン移籍に向かっています。
(近年のローン移籍例)
21-22シーズン:Imanol Ezkurdia
20-21シーズン:Gexan Elosegi、Anatz Elizondo、Théo Lucbert 

Añorga KKE/Oiartzun KE

所在地:(前者)Donostia、(後者)Oiartzun/Donostialdea

両クラブは、いずれも女子サッカーで有名なチームであり、Gipuzkoaサッカーを牽引してきた存在です。
Añorga KKEは'90年代にリーグ優勝が3回、女王杯優勝も3回と、スペイン女子サッカー史に輝かしい栄光を刻んでいます。
Oiartzun KEは'90 -'91シーズンにリーグ優勝し、'80年代に女王杯を2度優勝した。このクラブで選手として輝かしい成績を残したのみならず、選手キャリア後半は選手兼監督としても同クラブに貢献した人物として、Garbiñe Etxeberriaさんがいます。
彼女は、引退後La Realの初代監督を務め上げた人物で、その後クラブを一度離れるも、2017年から女子チームSDとしてLa Realに復帰し、チームの女王杯優勝(2019)に大きく貢献しています。選手としても、セカンドキャリアでもGipuzkoaサッカーに大きく貢献されている文字通りのレジェンドですね!
リーグ優勝を経験しているクラブが提携クラブとして、相談に乗ってもらえる立場にあるなんて、何とも心強い。

↓Garbiñeさんの輝かしい業績の一部が以下ページに記されています。

www.korner.eus

・Orioko FT

所在地:Orio/Urola Kosta

このクラブと言えば、何といってもイマノル・アルグアシル監督!Orioで生まれた彼はLa Realへの移籍前、このクラブで過ごしています!
↓歓待を笑顔で受けるイマノル。試合やトレーニング中の厳しい表情の裏にある愛情深い一面が見て取れますね。優れた指導者であり優れた人間。これぞMade in Gipuzkoa。La Realにいる全員の模範です。

www.noticiasdegipuzkoa.eus

・SD Beasain

所在地:Beasain/Goierri

Beasainといえばこの人、アリツ・エルストンド。Beasainで生まれた彼は、La Real加入前にこの地元クラブでプレーし、加入後も1年loanでこのクラブに一時戻っています。
現在2a RFEF(4部)でプレーするこのクラブとは、近年もクラブ間の選手移籍が複数あります。

・Mutriku F.T.

所在地:Mutriku/Debabarrena

我らがCapítan・アシエル・イジャラメンディの出身クラブです!
↓75周年を記念して、La Realが特別にトレーニングをMutrikuのピッチで行った動画がありました。ルッリやフアンミなど、今や他のLaLigaのクラブで活躍する面々がいて、20-21から追っている私にとっては新鮮な気持ちになりました。バレネ若!(更に)

www.realsociedad.eus

◆Gipuzkoa県外の提携クラブについて

Gipuzkoa県外にもLa Realと結びつきの強いクラブが沢山あります。ここでいくつか見ていきたいと思います。

・CD EDF Logroño

所在地:Logroño(ラ・リオハ

このクラブはLa Realの誇る新星・P.マリン(Sanse)とA.テハダの出身クラブということで取り上げました。P.マリン(2003年生まれ、U-19代表)は今季トップチームデビューを果たし、周りを良く観て瞬間瞬間で位置的優位を獲得するのが上手く、両足でボールを扱える技術も素晴らしいです。
A.テハダは2002年生まれとして若くしてスペイン女子フル代表に名を連ねる逸材のDFで、人に強いタイトな守備でチームに大きく貢献しています。

real-sociedad.diariovasco.com

・CD Calahorra

所在地:Calahorra(ラ・リオハ

1a RFEF(3部)と競争力の高いリーグでプレーしており、ここも選手のやり取りが多いクラブです。近年のLa Realからのローン移籍を例示しておきます。
22-23シーズン:Kerman Sukía、Iñaki Recio
21-22シーズン:Ander Zoilo、Jorge Martínez

・ÖIS Fotboll

所在地:Göteborg(スウェーデン

スペインから少し遠いスウェーデンのクラブとも選手のやり取りがあります。20-21シーズンにLa RealからPeru Ruiz(現在はカディスBでプレー)がローン移籍で行っていた他、ÖISからは2006年生まれのSantino Samuyiwa(2006年生まれ)が加入し、現在はJuvenil B(通称Easo)でプレーしています。本年スウェーデンU-16代表の試合でゴールを決めるなど脚光を浴びました。

ÖISのように、徳島ヴォルティスとも選手のやり取りがあるかもしれませんね!

~結びに~

今回は2Partに分けて、提携クラブについて取り上げてみました。今Partでは提携クラブの内の1部に触れましたが、新参サポの私が把握するのみでこれだけ国王杯を制していたり、選手を輩出しているので、他にも特色的なクラブが多々あるんだと思います。少しずつ知っていきたいです。

今の構造が変わらない限り、将来La Realで、またはX.アロンソやA.イジャラメンディのように世界に名を轟かせながら活躍する選手がGipuzkoa県、その他の地域からも出てくる選手が現れうることと思います。
今後もLa Realのみならず、関連し合う様々なクラブ/人/地域に注目していこうと思っております。皆様におかれましても、何か面白い情報を仕入れられたら教えていただけると嬉しいです!

🌳La Realの育成、提携クラブとの取り組みについて(1/2)

提携クラブの一覧がクラブ公式サイトにリストUPされたとの知らせを受け、標題記事の作成を決めました!本Partでは、La Realと、その提携クラブがどのように関わっているか、記していきます。
どっちにしろ細い内容ですが、実際にどんなクラブがある?どこの地域にあり、どんな選手を輩出している?などについては次Partで紹介しますので、そちらをご覧ください。

公式サイトの、提携クラブが掲載されているページのリンクは以下の通りです!

fundazioa.realsociedad.eus

La Realは、補強により獲得してきた選手達でなく、自分達の育成機関”Zubieta”で育った選手を軸に据えて戦っていることはLaLigaファンには知れ渡っていることと思います。
それでは、La Realが地方政府との取り決めの下、12歳未満のユース選手を入団させない/抱えていないということはご存知でしょうか?

この記事では、La Realの、育成に対する考え方に触れながら、「タレント」の育成を担う主役の一派である、提携クラブとの取り組みについて書いていきますm(_ _)m

◆選手の育成に対する考え方について

ユース年代の選手をプロのサッカー選手に育て上げるには、
技術面/戦術面/フィジカル面
の指導、成長が求められることは言わずもがな、La Realでは、それらピッチで問われる3要素が成長するための根底として、子供達にとって、
社会生活に馴染むこと(*)/家庭での生活/学校教育/感情面の発達
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(*)
:社会的刺激(例えば、集団生活による義務や制限)に対する感受性を身につけ、その集団または文化の枠組みの中で、生活を送る方法を学ぶこと

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これらがとても重要な要素だと考えられています。つまり、一人間としての要素ですね。
そして、これら要素の発達が、家族との生活、学校生活、地元という場所での生活、そこにいる友達との時間...etc これらにより促されると信じています。
La Realは「教育機関、提携クラブ、家庭...etcといった多くの担い手と連携・協力して、Gipuzkoaの子供たちの教育に参画する」というクラブの指導方針を、Gipuzkoa県政府、同県サッカー連盟(*)と共有しています。
(*)県政府/県サッカー連盟は、地域のサッカー選手育成の"担い手"を統括する公的主体として、La Realの育成プロセスに大きく寄与しています。

この考え方により、La Realは、将来のサッカー選手の少年時代、つまりユースキャリアの「入門段階」では、教育的観点から、彼らがありのまま育っていく自然な経過を尊重しています。これにより、将来サッカークラブに入団するGipuzkoaの子供は、少年時代を「日々家族との時間があり、地元の友達とともにサッカー以外の面にも思い思いに触れる」という環境で過ごしています。

クラブが抱える最年少選手の年齢は12歳です。12歳未満の将来のLa Realトップチーム選手はどこにいるのでしょうか?Gipuzkoa県、県外諸地域の隅々にその萌芽が見られます。

◆提携クラブとの関わりについて

La Realの育成プロセスの入門段階では、子供達が様々な規律・秩序や身体の動かし方を学ぶ場である、提携クラブたる地域のサッカースクールと、スポーツスクールが最も重要な存在です。
スポーツスクールでは、子供たちはサッカー以外のスポーツを学びます。小学生年代の子供達が色々なスポーツをすることは、彼らのフィジカル面/感情面の成長に繋がるのみならず、協力/団結/約束を守ること/役割に責任を持つこと といった、価値の習得をもたらすとLa Realは考えています。

一方サッカースクールは、子供達が約8歳の頃入団できるものとして現れます。子供たちは学校に通い、家での生活を送りながら、地元のLa Realの提携クラブたるサッカースクールに通う。La Realの提携クラブはクラブ公式サイトによると、96あるらしいです。{リストに掲載されているのは90クラブ(2022/12/20確認時点)。どうしてw}

特にGipuzkoa県に重きを置いているLa Realは、コーディネーターたる責任者を設け、"Gipuzkoa県の提携クラブ~La Real間のコンタクト"を担当させています。責任者の主な仕事は、各地域、各クラブの実情・ニーズを把握すること。これ無しには各クラブの向上への貢献はできないとの考えです。このため、この責任者は提携各クラブの幹部とコネクションを持つ者であり、これに努める。また、Gipuzkoa県内に留まらず、県近郊等他地域でも同じことが行われています。アラバ県、ナバーラ県/州、仏領バスクラ・リオハ県/州にもそれぞれ1名ずつ責任者がおり、特にビトリア=ガステイス(アラバ県都/バスク州都、仏領バスク、ログローニョ(ラ・リオハ県/州都)には常駐スタッフがいる他、La Realが技術指導を行うための拠点(センター)が設置されています。
各責任者は、全員が月に一度Zubietaに集まり、各提携クラブの実情をLa Real側に報告した上、そこにLa Realがどのように適応しているか、議論した上状況の改善を図り分析を行います。
提携各クラブとLa Realは日々協力し、物事の取り組み方を共有しながら唯一無二のモデルを創り上げ、同じ理念/信条の下、同じ目標・夢を抱いて歩んでいます。

U-11を持たないLa Realは、12歳未満の子供達の育成を、上述のように地域のスポーツスクール、提携クラブたるサッカースクールに委ねています。そこで成長したAlevín年代2年目、つまり12歳の子供を集めて最年少カテゴリである”Infantil Txiki”を構成しています。このInfantil Txikiのメンバーを選抜するため、子供達にLa Realの練習、La Realとして参加するトーナメントに招集して参加してもらい、彼らの素養向上に努めるとともにセレクションを行って、最終的に18~20人まで絞り込みます。

但し、この18~20人に残らず、提携クラブに戻った選手に関しても、La Realに入団させるためのセレクションは続いていきます。クラブ担当者が提携クラブの選手達の成長度合いを追い続け、La Realのユースカテゴリに在籍していない選手達にもクラブ内の者が技術指導を行います。そして、実際にLa RealのJuvenilチームやCチームに、各提携クラブから完全移籍により加入する選手達がいます。
簡単に提携クラブとの選手の行き来を図に示してみました。↴

イメージ図


現トップチーム在籍選手でいうと、Gipuzkoa県Ordizia出身のA.スビアウレがその一例に挙げられます。
(Alevin年代にはLa Realに加入せず、Gipuzkoa県内のLa Real提携クラブに在籍し続け、Juvenil年代の終わりにLa RealのCチームに加入。)
文字数制限に遭い、彼の略歴の続きはツリーにぶら下がっています。

また、ローン移籍により、La Real→提携クラブに選手が移るケースがあります。これはLa Realを去ることになる前触ればかりでなく、クラブに戻ってくるための武者修行として出るケースもあることを示しており、このプロセスを経て傑出したトッププロとなった選手が数多くいます。

 

◆La Realの、各提携クラブへの貢献内容

La Realから契約に基づき、提携クラブに対して行っている貢献例は次の通りです。

*経済支援
*医療サービス面の支援
*(技術/戦術面における)メソドロジーに関する貢献

貢献の内大きなものの一つとして、各クラブのコーチングスタッフに対する技術/戦術指導があります。これは、提携クラブ等各地のサッカークラブのスタッフのみを対象にしているわけではなく、2012-2013シーズンから、各スポーツスクール、各村々の学校に出向いて技術指導者の育成講座を開いています。各自治体のスポーツ関係者の協力を受けて行っている活動であり、La Realはこの協力に感謝し、活動を続けています。

また、医療面に関して、提携クラブの負傷者を受け入れ、La Realクラブ医療スタッフの診察を受けて貰う等設備を開放しています。設備の開放、訪問の受入れは医療面のみに留まるものではありません。各提携クラブスタッフがLa RealのGKコーチ責任者と話しに来ることなど、様々な形での訪問を勧め、交流しています。
このように、各提携クラブとは選手の往来に留まらず、双方向的に多くのアクションがあります。La Realは自分達のモデルに基づき、この循環構造を強く推進していかなければならないことを自覚しています。

◆結びに

このように、La Realユースチーム、トップチーム選手を輩出する場である提携クラブはめっちゃくちゃ重要な存在なんですね!
La Realのカンテラーノに提携クラブ出身者が多くいることから、提携クラブがLa Realの根幹を担っていると言えると思います。

次Partでは実際La Realがどんなクラブと提携契約を結んでいるか、また提携クラブ出身者にどんな選手がいるか等見ていきたいと思います。
¡Hasta la proxima!